当院では、『心療内科』の診療を行っています。この『心療内科』という言葉、正確な意味を把握されている方は少ないのではないでしょうか?『精神科』、『メンタルクリニック』、『こころケアクリニック』など、似たような単語も街に溢れていますしね。実際『心療内科』は読んで字の如く「“心”の“治療”をする“内科”」で、あくまで内科の一分野だということがポイントです(その他の単語は、イコール精神科と考えていただいて問題ないと思います)。

 

ただ、その“内科”という部分、現状ではかなり軽んじられている印象があります。例えば、もし貴方に悩み事があり、時々めまいを感じているとしましょう。「最近ストレスも多いし、そのせいで症状がでているのかな?」と思っていたとして、病院に行こうと考えたとき、貴方は『精神科』に行きますか?それとも『心療内科』に行きますか?もちろん人それぞれだとは思いますが、多くの方が「精神的なことも関係しているかもしれないけど、いきなり精神科は敷居が高いよな。周りの目も気になるし・・・」と思われるんじゃないかと思います。もちろん、精神科の先生方もそういった患者様の心理は分かっていますので、ご自身が開業されるときに「〇〇心療内科」「××メンタルクリニック」と名付けます。そのこと自体は全く問題ないのですが、患者様からしたら混乱を招く素になります。貴方が「まずは“症状”を治して欲しい!」と思っていたとしても、精神科を専門にされている先生の場合は、どうしてもそちらへの対応は後手に回ってしまいます(これは決して批判的な意味ではありません。精神科を専門にされ勉強している先生が、内科の医師に比べて症状への対応が不得手でも仕方がないのです)。

 

では、あらためて『心療内科』とはどういったものかご説明しましょう。『心療内科』とは、『心身医学』から出てきた言葉です。『心身医学』で扱う『心身症』に関して、日本心身医学会では「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的、ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外する。」と定義しています(1991年)。・・・ちょっと難しいですよね(^^;) 要するに、「病気の中でストレスなど“も”関連して胃炎や潰瘍、めまいや頭痛などの病気を発症したもの(うつ病などの症状の一部だったら除外する)」という意味です。この“も”というところがポイントです。不調の原因には“客観的に把握できるもの”(炎症や癌など血液検査や画像検査で確認できるもの)も“客観的に把握しにくいもの”(神経のバランスやストレスなど一般的な検査で確認しにくいもの)があるので、両方をバランスよく診ることが大切になります。とにかく、「まず症状ありき」なんです。よく「心療内科って、精神科の軽いものですか?」と聞かれますが、まったく違います。もちろん、うつ病、不眠症、不安障害といった疾患の診断や治療も行いますが、それは、心療内科の範疇の一部に過ぎません。むしろ、消化器内科、循環器内科、内分泌内科など内科専門分野の一つとご理解下さい。

 

 

具体的には、このような方にお勧めです。

 

  • ž 身体の症状がメインだけど、検査をしても異常が見つからず、経過からストレスなどが関与している可能性がある方
  • ž それまでは何もなかったのに、最近ストレスを強く感じることがあり、それ以降身体の調子が悪くなった方
  • ž 身体の症状なのか心の症状なのか、どちらがメインか区別がつかない方(いろんな可能性があるので、まずは内科を受診して器質的な疾患を除外する必要があります)。
  • ž「どこの病院に行っても『気持ちの問題だよ』『自律神経失調症だね』と言われてしまって・・・」とお悩みの方
  • ž「自分はもしかして精神疾患かもしれないけど、いきなり精神科に行くのはちょっと・・・」とお悩みの方

 

扱う疾患も片頭痛、緊張型頭痛、咽喉頭異常感症、高血圧、不整脈、狭心症、気管支喘息、胃潰瘍、周期性嘔吐症、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、過敏性膀胱、慢性疼痛、関節リウマチ、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など多種多様です(これらの病気にかかっている方の全てが心身症な訳ではありません)。並んでいる疾患名を見れば、この領域が内科であることがお分かりいただけると思います。もちろん、最終的にうつ病、不安障害、不眠症などの診断に至ることも多くありますので、そちらの治療も行っています。

 

そして、当院の心療内科診療の最大のポイントは「鑑別診断を専門にしている総合診療医が心療内科の診療を行っている」というところです。心療内科の診療のコツは、あえて「この症状はストレス以外が原因なんじゃないか?」と考えることだと個人的には思っています。仮に、いかにもストレスからきているような経過であっても、ストレスの関与はあえていったん横に置き、とにかく「何か他の原因がないか?」と考えます。一見矛盾しているように思われるかもしれませんが、これこそが病気の見落としを最小限に抑える“肝”なんです。

 

一度“ストレス”というレッテルが貼られると、医療者を含めてすべての人から「この人の症状はストレスのせいだから」という扱いを受け、長く苦しまれている患者様を大勢みてきました。そういった患者様の苦しみを少しでも減らしたい!そんなスタンスで日々診療を行っています。お悩みの方は一度ご相談下さい(初診の際はゆっくりお話しを伺いたいと思います。是非予約外来枠をご利用下さい)。

 

心療内科につきもう少し詳しく知りたい方は、研修医~若手医師向けのこちらのブログをご覧下さい。