「特別な夏」が続いています。去年の今頃は、まさかお盆の帰省すら躊躇しなければいけない時代が来るなんて、想像もしていませんでしたよね。100年に一度の感染症パンデミック(詳しくは「第二波、第三波は?――歴史が教えてくれること」をご覧下さい)ですので仕方ないのですが・・・一日も早く盆踊りや花火大会といった夏の風物詩が戻ることを祈るばかりです。

今年の夏、医療現場で大きな問題になっていることがあります。それは「これは熱中症?それともコロナ?」といった問題です。今は、少しでも熱があると「コロナかも!?」と心配になってしまう方が多くいらっしゃいますし、熱があると立ち入り禁止になる施設も沢山あります。仕方ないところもありますが、夏場にこの“発熱一辺倒”の対応は、ちょっと現実的ではありません。実際、今の時期に外から院内に入られてすぐ体温を測ったら、4人に1人は37℃を超えていらっしゃいます。そして何より熱中症。医師の私が言うと身も蓋もありませんが、今年の熱中症診療はとにかく難しいです

まずは、今年の熱中症の特徴から。コロナウイルス感染症の対策をしていることにより、以下に示すように熱中症にかかる可能性が高くなっています。例年以上に熱中症への対策が必要になります

外出自粛により、熱に順応できていない(汗をかきにくくなっていたり、筋力が落ちたりしています)

・マスクにより熱がこもりやすい(ご高齢の方だと、口の渇きを感じにくくなったりします)

・マスクをすることで、小まめな水分補強が面倒

・小まめに換気することにより、適度な室温が保ちにくい

熱中症の症状は、重症度によって3段階に分けられています。以下は、日本救急医学会が出している熱中症の分類です。

(熱中症診療ガイドライン2015より)

色々書いてありますが、シンプルにしたらこんな感じです。

私が個人的にポイントと思っているのは「立ちくらみも熱中症!」ということです。「車から降りたら立ちくらみ」「お店から出たらフラッとした」は熱中症なのでご注意を。

ここからが本題になります。結論から言えば、熱中症と新型コロナウイルス感染症の見分けることは、医療者でも難しいです。全身のだるさ、頭痛、吐き気や食欲がないといった消化器症状、筋肉痛、関節痛、発熱。これらの症状は、すべて新型コロナと熱中症で共通して起こりますし、味覚異常ですら、熱中症でも起こります

でも、「という訳で、熱中症とコロナは見分けがつきませんよー」ではこのブログの意味がありません(;^_^A 何とか違いを探してみましょう。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200516-00178297/より

やはり、ポイントになってくるの『咳』『痰』『息切れ』です。熱中症でもこれらの症状が全く出ない訳ではないですが、少なくとも症状の中心になることはありません。また、新型コロナウイルス感染症でも意識がぼーとすることはありますが、これは症状が進行した場合にみられる症状です。熱中症では初期から認める場合があります。痙攣やめまいも、新型コロナウイルス感染症には特徴的ではありません

何より一番気を付けていただきたことが、「熱中症は一刻を争う病気だ」ということです。熱中症は、ほうっておくとその日のうちに死に至る病です。急に重症化するという点では、実はコロナよりも熱中症のほうが怖いんです。ですから、もし熱中症か新型コロナウイルス感染症か迷う時は、まず熱中症を疑って行動するようにして下さい。