最近、芸能人の方がご自身のがんを告白することがおおくなっていますよね。色々な意見があると思いますが、「早期発見の重要性の啓蒙」という意味では、個人的には非常に意味のあることだと思います。ワイドショーで取り上げられることで、先進国の中で極めて低いがん検診の受診率が上がることが期待されます。

 

実際、早期発見がどれほど有用なのか?昨年国立がん研究センターが、約35,000人のがん患者さんを10年間追跡した大規模臨床研究データを発表しました。色々な報告がされていますが、その中で『早期がん(ステージⅠ)の10年生存率(10年後に生きている割合)』に関してまとめてみました。

 

  •  90%以上:甲状腺がん(100%)、咽頭がん(98.9%)、大腸がん(96.8%)、胃がん(95.1%)、子宮体がん(94.4%)、乳がん(93.5%)、前立腺がん(93.0%)、子宮頸がん(91.3%)、腎がん(91.3%)
  • 70%以上:卵巣がん(84.6%)、膀胱がん(81.4%)
  • 50%以上:気管・肺がん(69.3%)、食道がん(64.1%)、胆嚢・胆管がん(53.6%)
  • 50%未満:膵がん(29.6%)、肝臓がん(29.3%)

 

対象が1999年~2003年にかけて登録された症例ですので、その後の治療の進歩を考えればもっと良くなっていると思いますが、「やっぱり肝臓や膵臓のがんは怖いな」「甲状腺のがんは結構大丈夫なんだね」といった、皆さんの感覚にも近い数値なのではないかと思います(この報告は、それ以外にも様々な内容が書かれています。少し小難しい話になりますが、以前に研修医~若手医師を対象として書いたブログに詳細を記載していますので、興味のある方はご覧ください→『10年生存率・・・6割(@_@;)!?』)。

 

この中で、特に発症する頻度の高い胃がん(男性1位、女性3位)と大腸がん(男性3位、女性2位)、および10年生存率の極めて低い膵がん、肝臓がんは、特に早期発見が重要ということがお分かりいただけるかと思います。消化器がんの早期発見の方法で一番いいのは、やはり胃カメラと大腸カメラです。ただ・・・苦しいです(汗)。胃カメラなんかは鼻から出来るものもあり随分楽になりましたが、苦手な方にとってはやはり苦痛です。大腸カメラに至っては検査自体も大変ですが、何より検査前の処置が大変です。よく採血で行われる腫瘍マーカーも、進行したがんの発見や治療効果の判断には有用ですが、初期のがんに対してはあまり効果がありません(もちろん、検査するに越したことはありませんので、出来る機会があれば積極的に受けることをお勧めします)。

 

今回のタイトルに書かせていただいた『マイクロアレイ』は、超早期のがんを遺伝子レベルで判定する世界初の技術です。身体には、病気の発症や遺物の存在から身を守る免疫という防御システムを持っています。この防御システムは細胞内の特定のRNA(いわゆる遺伝子のことです)の出現や量の変化によって行われています。このRNAの変化をキャッチすることでがんの発症を確認するのが、この『マイクロアレイ検査』です。対象は胃がん、大腸がん、胆嚢がん、膵がんの消化器系がんで、非常に高い精度を持っています。

 

<マイクロアレイ検査の特徴>

  • 消化器系のがんに対して9割の高い感度を示します。
  • 胃がん、大腸がん、胆嚢がん、膵がんを、一度の採血で検査できます
  • 5㏄程度の血液を採取するだけです(特殊な薬剤投与やX線被爆もありません)
  • 2~3週間程度で結果が出ます

 

報告書のサンプルはこちら→マイクロアレイ 報告例

 

この検査は、がんになりやすいかどうかのリスクを分析するものではなく、既にがんであることを判別する検査です。胃がん/大腸がん、膵がん、胆嚢がんの部位の識別もできますし、早期がんと進行がんの判断もある程度行えます(大腸ポリープがある、もしくは切除して2年以内の場合や、他のがんであったりしても陽性と出る場合があります)。

 

がんの早期発見に頭を悩ませてきた我々医療者にとっては福音のような検査なのですが、残念ながらまだ保険適応はありません。正直、安い検査ではありません。ただ、素晴らしい検査であることは自信を持って言えます。出来る限り多くの方に受けていただきたいと考え、当院では可能な限り安価(税込68,000円)でさせていただいています。興味のある方は是非一度ご相談下さい。