タバコが身体に悪いということは、皆さんご存知だと思います。実際、厚労省を中心として喫煙に対する啓蒙活動が進んだことにより、男女ともに喫煙率は下がってきています(最も男性の喫煙歴が高かったのは昭和41年の83.7%!)。ただ、男性に比べて女性の喫煙率の減少は非常に緩やかで、20代に関してはやや増加傾向にあるようです。
では、禁煙をすることでどれほど“得”をするのでしょうか?まずは、喫煙をすることでどういった疾患の頻度が増えるか確認してみましょう。生命に係わる病気が多いですよね。
喉頭がん、口腔・咽頭がん、肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵がん、膀胱がん、子宮がん、卵巣がん、脳出血、脳梗塞、COPD、慢性気管支炎、喘息、心筋梗塞、狭心症、メタボリック症候群、糖尿病、Buerger病、胃十二指腸潰瘍、歯周病、低出生体重児、勃起不全
挙げだしたらキリがないのですが、今回はがんについて。以下の表は、国立がんセンターが発表した、「タバコを吸うとどれぐらいそれぞれのがんで亡くなる可能性が高くなるか?」といったデータです。相対リスクというのは、「タバコを吸っていない人がそのがんで亡くなる可能性を1とした場合、タバコを吸っている人は何倍その可能性が高くなるか」といった数値です。例えば、男性の場合、タバコを吸う人は吸わない人に比べて肺がんで亡くなる可能性が4.8倍高くなる訳です。
この数値をどう受け止めるかは個人の自由だと思います。「たかだか4~5倍程度ならこのまま吸ってたほうがいいよ」という考えなら、それはそれで尊重されるべきだと思います(もちろん、それ以外のリスクも沢山上がりますが)。ただ、リスクが高まることが分かっている以上、医療者側が禁煙を勧めるのは必然なのです。
禁煙を勧めるために、もう少し情報を追加しておきましょう。タバコを止めると身体にどういった変化が出てくるかを、時系列で挙げてみます。
- 数時間後:一酸化炭素レベルが非喫煙者と同じになる
- 数日後:味覚・嗅覚が鋭敏になる
- 1~2ヵ月後:慢性気管支炎の症状(咳嗽、喀痰、喘鳴)が改善する
- 1年後:軽度~中等度のCOPD患者で肺機能が改善しはじめる
- 2~4年後:冠動脈疾患のリスクが、喫煙継続者に比べてかなり低下する(冠動脈疾患患者では、再梗塞や死亡のリスクが約35%低下する)
- 5年後:肺機能の低下速度が非喫煙者と同等になる
- 5~9年:肺がんのリスクが、喫煙継続者に比べて明らかに低下する
- 10~15年後:喉頭がんのリスクが、喫煙継続者より60%低下する(冠動脈疾患のリスクが非喫煙者と同じレベルになる(種々の報告あり))
- 10~19年後:肺がんのリスクが、喫煙継続者より70%以上低下する
- 20年:口腔がんのリスクが、非喫煙者と同じレベルになる
タバコが原因で病気になられて、辛い思いをされている方を沢山みてきました。「大きなお世話だ!」と思われるかもしれませんが、やっぱり「タバコは止めましょう」と言い続けようと思います。