お盆も過ぎて、そろそろ秋に向けて暑さも少しずつ緩みだし・・・なんてこと、全然なくなってしまいましたよね。「暑さ寒さも彼岸まで」なんて言葉も今は昔。長い夏は、健康面にも様々な影響を与えますが、この時期に気を付けなければいけないのが「運動不足による体力低下」です。普段しっかり散歩しているご年配の方々も、暑くて外に出られなくてその習慣が途切れてしまった、なんてこともよく伺います。最近は涼しいショッピングモール内を歩いている方も増えてきましたが、なかなか毎日行くのも大変ですしね。
「歩くことは大切だ」ということに関しては、誰にとっても共通認識だと思います。まず、我々が平均してどの程度歩いているのかを確認してみましょう。意外に歩いているんだなって思いませんか?
「これだけ歩いていれば十分でしょ」って個人的には思いますが、厚生労働省はこれでは許してくれないようです。現在国で進めている健康増進の基本方針『健康日本21』では、「身体活動量と死亡率などとの関連をみた疫学的研究の結果からは、「1日1万歩」の歩数を確保することが理想と考えられる」と記載されています。一応、週あたり2,000kcal以上のエネルギーを消費するためには、時速4km(分速70m)で1日あたり100分ほど歩く必要があり、これがおよそ10,000歩に当たる・・・ということらしいです。ただ、この「週あたり2,000kcal以上」という数字自体、あまり根拠のあるものではなさそうです。第一、「1日100分歩く」という目標は、仕事や家事で忙しい世代や、活動量が減っているご年配の方にとっては、かなり高いハードルだと思います。
「1日10,000歩なんて無理だよ涙」とお嘆きの貴方にとって、朗報になる論文があります。2024年7月、シドニー大学などの研究チームがイギリスの医学誌『The Lancet Public Health』に発表した論文で、約16万人の成人の膨大なデータを、歩数と健康の関係について詳しく検討したものです。その結果、1日に7,000歩歩いた人と2,000歩歩いた人とのリスク比較は以下の通りです。
『死亡リスクが47%減少!』は、相当なインパクトですよね。
もちろん、10,000歩歩くことが悪い訳ではありません。むしろ、「死亡率全体、心血管疾患の発症、がんによる死亡率、認知症や抑うつ症状に関しては、一日7,000歩の場合よりも一日10,000歩の方が大幅にリスクが下がる」という報告もあります。ただ、やはり10,000歩(100分)を毎日歩くのは、かなりの覚悟がいりますよね。7,000歩は約5.6kmに相当しますが、少し速いペースで歩けば1時間ちょっと・・・何とかなる気がします。
さらに興味深い点は、歩く速さ、時間帯、場所は関係なく、かつ連続でなくてもいいということです。「よっしゃ、1時間早く起きてウォーキングしよう!」なんて気負い過ぎる必要はなく、日常生活の中に織り交ぜていけばいいのです。
例えばこんな感じです。
- 電車通勤の方は、一駅手前で降りて歩く
- 駐車場では、少し離れた駐車場を選んだり、駐車場内の離れた場所に停める
- エレベーターやエスカレーターは極力使わない(腰痛や膝痛のある方は無理せずに)
- お店が近い時は、車を使わず極力歩く
- 仕事の合間、お昼休みにリフレッシャも兼ねて5~10分散歩をする
これらを生活の中の一部にすることが肝心です。こういった“+α”を意識した生活を万歩計やスマートフォンの歩数計などでカウントし、7,000歩に足りない分をウォーキングで補うのが理想です。
ただ、この報告は年齢や体力低下などの要因を考慮に入れていませんので、「すべての世代が70,00歩目指しましょう!」という訳ではありません。あくまでご自分の体力にあわせて、「無理なく続けられる」のを目標にしましょう。