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お知らせ医療ブログ

黄砂襲来! “砂”だからって甘くみていると・・・

最近は教育関係の仕事に力を入れさせていただいており、こちらのブログの更新が疎かに・・・すみません汗

 

今回のテーマは『黄砂』です。私事で恐縮です。外来で「朝日を浴びてセロトニンを増やしましょう!」と言っている私の朝の日課は、ベランダに洗濯物を干すことなのですが、この時期は空を見上げるたびに憂鬱な気分に・・・。天気予報は晴れなのに、空一面に靄がかかっていますよね。もちろん花粉も沢山飛んでいるのですが、今年に関しては、薄暗い空の原因は『黄砂』のようです。花粉は花粉で大変なのですが、黄砂は花粉の攻撃力を増幅させたり、黄砂そのものの攻撃で我々の身体にダメージを与えたりと、とにかく厄介者なのです。

 

そもそも黄砂とは?

 

黄砂とは、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠などの砂漠地域、黄土高原などの乾燥・半乾燥地域で、風によって数千メートルの高度にまで巻き上げられた土壌・鉱物粒子が偏西風に乗って東アジアを中心に飛来し、大気中に浮遊あるいは降下する現象をいいます(粒子その物を指すこともあります)。ここ20年程騒がれている印象がありますが、もちろん古くから発生していた自然現象です。ただ、家畜の過放牧や農地転換などによる土地の劣化との関連性も指摘されています。昨今では、農業やインフラなど生活環境に重大な被害が及ぼしたり、黄砂粒子が含まれた雲や雨が要因となり、地球全体の気候に影響を及ぼしたりしたりといった理由から注目されるようになっています。さらに、飛んで来るまでの過程で、黄砂に大気汚染物質やほこり、ダニなどが付着し、それを吸入してしまうことによる健康被害も懸念されています

 

 

黄砂の厄介なところの一つとして、その形があります。“砂”なんてキャッチ―な単語が使われているので誤解されやすいですが、その形状はトゲトゲで金平糖のような・・・いや、これも可愛らしすぎますね。個人的には忍者の使う“マキビシ”のようだなと思います。これが直接攻撃してきたら・・・そりゃダメージ大きいですよね 汗

 

黄砂の大きさ

 

黄砂が厄介なのは、その大きさにも原因があります。通常、花粉の大きさは直径約30μmで、これは一般的なマスク(サージカルマスク)で充分に防ぐことができます。ただ、黄砂の大きさは花粉の約8分の1(ちなみにPM2.5は約12分の1)しかありません。この大きさは、鼻や喉を通過して、気管支、さらには肺の中の肺胞にまで到達できる大きさなのです。小さなマキビシが肺の奥まで潜り込んでダメージを与える・・・恐ろしいですね。

 

 

 

さらに厄介『花粉爆発』

 

さらに厄介なことを黄砂は起こします。『花粉爆発』という言葉をご存じでしょうか?先ほど花粉は一般的なマスクで防ぐことが出来ると言いましたが、この『花粉爆発』が起きると花粉は破れてしましい、その中に含まれているアレルゲン物質が細かく砕け、マスクはもちろん、鼻や喉を通り抜けて気管支や肺まで到達してしまいます。この爆発のきっかけになるものの代表が、今回の主役である『黄砂』です。他には自動車排気ガス、ゴミ焼却・工場排煙などの燃焼煙源からの硫酸塩や硝酸塩、金属成分などを含む微小粒子状物質(PM2.5)などが花粉表面を傷つけます。

 

 

皆さんも、最近花粉症の方の症状が強くなっている印象があるのではないでしょうか。実際、黄砂よりずっと大きな花粉は、鼻水や目のかゆみなどの症状を引き起こす程度で、気管支や肺にはほとんど影響がないと言われていました。しかし、花粉爆発により細かくなった粒子は、肺の末端まで入って気管支炎や喘息などの症状を引き起こす可能性があります

 

あと、これはちょっと蛇足ですが、「雨の日の翌日は花粉症の症状が酷い」のは、この花粉爆発の影響があります。上のイメージ図にあるように、表面が破裂した花粉から粒子が飛び散るためには、水分を含んで膨らむ必要があります。湿度の高い雨の日に起こることが多い訳です。それに加え、空気中を舞っている花粉は雨が降ると地面に落下し、その勢いで砕けて30分の1くらいに小さくなります。さらに、車や人により花粉が踏みつぶされてもっと細かくなってしまいます。つまり、雨の翌日は、その日飛んでいる通常の花粉、爆発した花粉、さらに地面から舞い上がる細かい花粉のトリプルパンチで大変な状況になっている訳です。

 

黄砂が引き起こす症状は?

 

黄砂を原因とする体調不良の症状は、大きく分けて①アレルギー症状②呼吸器症状③循環器症状の3つです。ただし、黄砂による直接的な健康への影響はまだ不明な点も多く、現在も検証がすすめられています。

 

1. アレルギー症状

黄砂アレルギーでは、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどのイガイガ感、咳、頭痛など、花粉症と同じような症状を認めます。このような体を守ろうとする反応が、「熱っぽい」「だるい」「眠い」などの症状につながることもあり、風邪の症状と間違えられる場合もあります。また、黄砂によって皮膚のかゆみや湿疹などの症状が出る方は、金属アレルギーの傾向があるといわれています。黄砂粒子に含まれる鉱物に反応し、皮膚の炎症が引き起こされている可能性があるからです。現段階では、残念ながら黄砂自体のアレルギー検査はできません。しかし、花粉症やホコリ、ダニのアレルギーなどの項目を検査することにより、黄砂によるアレルギー反応であるかを推測することは出来ます。

 

2. 呼吸器症状

先ほど述べた通り、黄砂は非常に粒子が小さく、かつトゲトゲした形をしていますので、気管支や肺胞まで入り込み、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の症状が出る場合があります。特に、気道のバリアが弱い小児や高齢者の場合は、症状が強く出てしまう可能性があります。また、黄砂は喘息ではない人でも、濃度が高いほど咳が出るという報告もあります。

 

3. 循環器症状

詳細な因果関係はまだ分かっていませんが、黄砂は循環器疾患との関連も指摘されています。黄砂の量が多い時に脳梗塞や心筋梗塞の発症数や入院患者数の増加の報告があったり、不整脈発症のリスクが上がるといた報告がされています。特に、高齢者や糖尿病、慢性腎臓病などをお持ちの方は、循環器疾患に影響するリスクが高くなると報告されているため、注意が必要です。

 

 

黄砂に対する治療

 

結論から先に言うと、黄砂に対する特効薬は、残念ながらありません。薬での治療は症状を緩和させる対症療法が中心となります。目や皮膚のかゆみ・鼻水・鼻づまりなどのアレルギー反応には、花粉症と同じ抗ヒスタミン薬という飲み薬を使います。目のかゆみがひどい場合には点眼薬、鼻の症状が強い時は点鼻薬も併用することがあります。「目薬をさすのが苦手!」「仕事で目薬を使うタイミングがない!」なんて方には、1日1回目の周囲に塗る薬もありますので、是非お医者さんでご相談下さい(アレジオン眼瞼クリームをご使用の患者さんへ | 参天製薬日本サイト)。

 

とにかく、黄砂をなるべく排除する生活環境を整えることに尽きます。「黄砂の多い日は外に出ない!」が一番の対策ですが、そういう訳にもいきませんよね。具体的な対策を挙げてみますので、参考にしてみてください。

 

  • 床に付着した黄砂を巻き散らさないよう、朝一で床掃除をする
  • 日々黄砂の飛散状況を確認し、飛散量が多い日はなるべく外出を控える(お勧め:黄砂~環境省黄砂飛来情報(ライダー黄砂観測データ提供ページ)
  • 外出の際は、できるだけ黄砂が付着しにくいナイロン製の服を着用する
  • 帽子をかぶり、髪の毛や頭皮に黄砂が付着するのを防ぐ
  • 黄砂をブロックできる機能性の高いマスクを着用する(不顕性マスクでも付けないよりマシです)
  • 花粉やPM2.5対策のスプレーを使用する(ただし、効果は不確実です)
  • 外出時の激しい運動、長時間の運動は避ける
  • 部屋に入る前に、服に付着している黄砂を出来るだけ払う
  • 帰宅後は手洗い、洗顔、うがいを行う。症状が強い方はシャワーを
  • 部屋の換気は最小限にして、できれば空気清浄機を使う
  • 濡れた雑巾やウェットシートでこまめに床を拭く
  • 洗濯物は部屋干し、もしくは乾燥機を使う