帯状疱疹のワクチン接種が始まっています。非常に有効なワクチンですので、個人的にはもともと「うてる方は極力うちましょう!」というスタンスですので、定期接種化は大賛成です。ただ、定期接種化されると、なんとな~く、漠然とうたれるようになっていくのでは・・・ま、広くうたれるならそれでもいいんですけどね。でも、せっかくうつなら、その必要性をしっかり理解しておきたいところです。
以前にこのブログでも書かせていただいたこともありますが(備えて安心!『帯状疱疹』)、今回、当院で研修していただいた研修医の先生に『帯状疱疹』についてまとめていただきました。もちろん、内容は非常にしっかりしていますし、最新の知見も入れていただいています。「帯状疱疹って身近で怖い病気なんだな」って再確認していただければ幸いです。
帯状疱疹は、皮膚に痛みや発疹が現れる病気であり、日本の成人の約9割の人が発症する可能性を持っている病気です。令和7年度から、65歳以上の方を対象に帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始となったことで耳にする機会も増えたのではないでしょうか。今回は、帯状疱疹はどのような病気であり、どのように予防や治療を行なっていくのが良いのか改めてお話しするとともに、ワクチンの情報についてもお伝えします。
○原因
帯状疱疹はみずぼうそうと同じウイルスが原因です。子供の頃、水ぼうそうにかかった後も、ウイルスは神経の中に潜んでいます。普段は体の免疫力によって活動が抑えられているため症状はありませんが、加齢やストレスによって免疫力が低下するとウイルスは再び活動・増殖を始めます。そして神経の流れに沿って皮膚へと移動し、帯状に痛みや発疹を引き起こします。
子供の頃に水ぼうそうにかかった人だけでなく、自覚症状がないまま体内にウイルスを持っている人もおり、日本の成人の9割は帯状疱疹ウイルスを持っていると考えられています。
そして帯状疱疹の発症率は50代以降年齢とともに高くなり、80歳までに3人に1人が帯状疱疹になると言われています。
○帯状疱疹は他人に感染するのか
帯状疱疹は直接人に感染することはありません。しかし、帯状疱疹患者さんの発疹の中にはウイルスが含まれているため、今まで水ぼうそうにかかったことのない乳幼児や子供が触れると水ぼうそうとして発症する可能性があります。
○症状
通常は痛みやかゆみが、発疹の出る2〜3日前から現れます。発疹の多くは上半身の左右どちらかに帯状に現れます。顔や耳に出ることもあります。発疹ははじめ赤い斑点や小さな盛り上がりで、徐々に水ぶくれになっていき痛みも強くなります。頭痛や発熱、倦怠感が出る人もいます。目や耳の神経が傷つけられると、視力の低下や難聴を引き起こすこともあります。こうした症状は後遺症として残る可能性もあるため、帯状疱疹かもと感じたときには早めに医療機関を受診することが大切です。
○治療法
帯状疱疹の治療は、ウイルスの活動を抑えること、痛みを和らげることを中心に行います。主に、原因である水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と、痛みを抑える鎮痛薬を使います。抗ウイルス薬は皮疹が出てから3日以内に開始することが望ましいとされており、7日間服用します。眼や脳の神経系の合併症がある場合は、その症状に応じて治療を行います。
○後遺症
水ぶくれは通常10日ほどでかさぶたになり、正常の皮膚に戻るのは約1ヶ月後です。
しかし、皮膚症状が治った後も痛みが後遺症として残る「帯状疱疹後神経痛」を発症する人もいます。焼けるようなズキズキとした痛みを感じ、中には軽く触れただけでも強い痛みを感じることがあり、日常生活にも大きな支障をきたします。加齢とともに帯状疱疹後神経痛になるリスクは上がりますから、帯状疱疹の発症自体を予防することが重要だと考えられています。
○予防
帯状疱疹には、かかるリスクを軽減するためのワクチンがあります。また、もし発症しても症状が軽く済むというデータもあります。
令和7年度より帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始となり、65歳以上の方は法律で接種することが勧められるようになりました。対象者は接種費用の一部の助成を受けられます。定期接種の対象でない方も、もちろん任意接種としてワクチンを接種することはできます。
定期接種はその年度内に65歳を迎える方が接種の対象となります。また、令和7年度から11年度までの5年間は、その年度内に70、75、80、85、90、95、100歳となる方も対象となります。
帯状疱疹のワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンの二種類があります。
生ワクチンの利点は接種が1回で済むところと、定期接種の場合は2900円と安価なところです。接種後1年間の予防率は6割程度、5年間では4割程度です。不活化ワクチンは接種後5年でも9割以上の予防率がありかなり強力な予防効果があると言えます。しかし、筋肉注射のため接種後に痛みや腫れが出る可能性があることや、2回接種が必要であり、それに伴い費用も2回で14400円と生ワクチンと比較すると高価です。
接種回数や費用、効果を確認した上でご自身の状況に合うワクチンを選ぶことが重要です。
○帯状疱疹ワクチンが心筋梗塞や脳卒中の予防に?
韓国で行われた100万人以上を対象とした研究では、50歳以上の人では帯状疱疹ワクチンを接種した人々は心血管リスクが23%減少したとの報告があります。帯状疱疹にかかることによって血管に炎症が起き、血栓が作られやすくなり、この血栓が心臓の血管に詰まると心筋梗塞、脳血管に詰まると脳梗塞を起こす可能性があるためと考えられています。
様々な辛い症状や後遺症を引き起こす帯状疱疹、誰にでも発症する可能性はあります。生活習慣の見直しで免疫力を高めることはもちろん、ワクチン接種も一度検討されてみてはいかがでしょうか。わからないことや判断に迷うことがあれば、お気軽にご相談ください。