インフルエンザの猛威が止まりません。現在の流行の中心は主に10代以下ですが、今後は親世代、祖父母世代にも感染の広まりが予想されます。実感として、新型コロナのパンデミック以降、インフルエンザをはじめ、様々なウイルスの『無法地帯』になっている気がします。「インフルエンザはこの時期に流行りだして、こんな症状から始まって~」みたいなことが言いにくくなってきています。
ちなみに、大正製薬と弘前大学・京都大学の共同研究チームは、これまでの健康データからインフルエンザにかかりやすい人の5つのタイプを発表しました。
- 血糖が高い
- 肺炎を経験したことがある
- 多忙、睡眠不足
- 栄養不良
- アレルギーがある
特に、「血糖が高い」、「肺炎を経験したことがある」、「睡眠不足」の3つが全て当てはまる人は、インフルエンザの発症リスクがおよそ3.6倍に上がるそうです。当てはまる方は、くれぐれもご注意下さい。
さて、ここまでは前振りです!今回も、当院で学んでくださった研修医の先生が、素敵なブログを書いてくれました。是非ご一読下さい。
インフルエンザワクチン接種が始まりました
インフルエンザは毎年11月から4月に流行し、1月から3月にピークを迎えます。受験や就職など大切な場面で体調万全な状態で挑めるようにインフルエンザの感染は可能な限り減らしたいものです。予防策の一つとしてワクチン接種が始まります。インフルエンザワクチンに関連して、インフルエンザのこと、新しいワクチンのことなどこの時期気になるテーマについてまとめてみました。
インフルエンザ感染症
診断基準
A診断した医師の判断により、症状や初見からインフルエンザが疑われ、かつ次の4つのすべてを満たすもの①突然の発症、②38度を超える発熱、③上気道症状、④全身倦怠感などの全身症状
B上記の基準には必ずしも満たさないが、診断した医師の判断によりインフルエンザが疑われ、かつ病原体診断や血清学的診断によってインフルエンザと診断されたもの
流行期においては特に37.8度以上の発熱、咳嗽、鼻汁はインフルエンザの可能性が高いと言われています。インフルエンザではない”風邪”は比較的ゆっくりと鼻水、咳、咽頭通といった症状が出現し、4~5日程度で改善することが多いのに対し、インフルエンザは急激に発熱、全身倦怠感、頭痛、咳・鼻水などの症状が現れ、1週間程度の経過で回復していくことが多いです。子供ではまれに急性脳症を、ご高齢の方や免疫力が低下している方では二次性の肺炎を伴うなどの重症になることがあります。

ちなみに、新型コロナ
症状の現れかたは個人差もありますが、比較的緩やかで、微熱~高熱、咳、関節痛や筋肉痛、倦怠感、味覚・嗅覚異常といった症状が続きます。軽症の場合は1週間程度で回復しますが、無症状の人が急に重症化することもあり注意が必要です。また、味覚異常などの後遺症が残ることがあります。
対策・予防
感染経路
インフルエンザウイルスの感染経路には飛沫感染と接触感染があります。「飛沫感染」はくしゃみや咳などによる飛沫と一緒にウイルスが放出され、近くにいる人がそれを口や鼻から吸い込み、粘膜から体内に入ることで起こります。マスクを着用することで飛沫の拡大を抑えられます。「接触感染」はウイルスが付着した手や物品で鼻や口、目の粘膜に触れ、ウイルスが粘膜から体内に入ることで起こります。手洗いやアルコール消毒、可能であれば目や顔を洗うなどしてウイルスの粘膜への付着を防ぐことができます。
環境
空気が乾燥すると喉の粘膜の防御機能が低下します。また、乾燥した環境ではインフルエンザウイルスが長生きしやすいため、適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。室内の定期的な換気が大切です。
生活
規則正しい生活とバランスのとれた栄養摂取を日頃から心がけましょう。ビタミンの多い大葉やキノコ類の摂取がおすすめです。
インフルエンザワクチン
年齢にかかわらず、発症防止に対する有効率は60%程度と報告されています。ワクチンを接種すれば絶対にかからないというものではありませんが、発病予防や発病後の重症化や死亡を予防することにある程度の効果があるとされています。
効果が現れるのはワクチン接種2週間後からで、その後約5か月間効果が持続します。日本では12月から4月に流行するため、11月から12月中旬までの接種が望ましいと考えられます。
13歳未満は原則として、2~4週間の間隔を置いて2回の接種となっています、また、13歳以上の方でも基礎疾患のある方で免疫が抑制されている状態にあると考えられる方は、2回接種をお勧めする場合もあります。
ワクチン接種後の副反応でよく見られるものは、接種した場所の赤み、腫れ、痛みですが、通常2~3日で消失します。全身性の反応として発熱、頭痛、寒気、倦怠感などが見られることもありますが、こちらも2~3日で改善します。また、稀ではありますが、アナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難など)が見られることもあります。
費用は自己負担で約3,000~5,000円/回程度です。岐阜市に住民票がある生後6か月~小学校就学前のお子様や65歳以上の方や60~64歳で基礎疾患がある方などは補助金の対象となっています。

痛くないワクチン、フルミスト
乳幼児においてインフルエンザ脳症のような重篤な合併症の報告も多く、小児でのインフルエンザ予防は重要です。『フルミスト』は日本初の鼻腔内にスプレーする、経鼻型のインフルエンザワクチンで、針を使用する必要がなく、お子様に使用しやすいワクチンとなっています。また、弱められたインフルエンザウイルスが自然な感染経路に近い形で免疫反応を引き起こすため、免疫の反応が強化され、皮下注射型のワクチンよりも効果も効果も持続期間(1年という報告あり)もよいとされています。
インフルエンザ抗原検査
風邪症状がまだそろっていない(倦怠感のみ、関節痛のみなど)の場合、症状が出てからすぐに検査をしても陽性とならない可能性が高くなってしまうため、発症から24時間以上経過したタイミングでの検査をおすすめしています。インフル様症状(発熱、倦怠感、関節痛、咳嗽、鼻汁など)がある、または周囲に感染者がいる場合は早めの検査でも陽性となる確率は高くなります。陽性とならなかった場合も症状や周囲の状況からインフルエンザとして治療を開始することもあります。
抗インフルエンザウイルス薬
国内で使用されている主な抗インフルエンザウイルス薬にはリレンザ、タミフル、ラピアクタ、イナビル、ゾフルーザがあります。これらの薬はウイルスが増殖中である発症後48時間以内で使用する必要があります。若くて基礎疾患のない方においての効果は症状のある時間を1日短縮するくらいの限定的な効果となっています。
一方、重症化リスクのある方の場合、重症化を防ぐ効果が期待できます。この効果は発症から48時間を過ぎてからの使用でも十分に期待できるとする報告もあるので相談して治療を決めていきます。
万全の対策をして、冬を楽しんで過ごしてください!