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赤ちゃんの車内放置 ―― あなたが当事者にならない為に

相変わらず暑い毎日が続いていますね~。少し夏休みをいただいていたので、屋外にいることも多かったのですが・・・溶けますね汗 車の外気温センサーが44℃を示していた時は、不謹慎にも笑ってしまいました。いやいや、マンガじゃないんだから・・・。しかも、専門家の方が「今年皆さんが経験している夏は、実はこれから先の夏の中で一番楽な夏だと思ってください」なんて・・・恐ろしいですね。

そんな中、いくつか執筆の依頼をいただきました。

「熱中症」だと思ったら「新型コロナ」だったケースも 見分けがつかないときはどう判断?

子供の車内放置 保護者は「常に危機感を」

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この中で、特に気になった内容は2つめの「子供の車内放置」です。毎年、暑い車内にお子さんが放置されることにより、取り返しのつかない事態になってしまう痛ましい事故が報告されています。一人でもいいので、その事態を回避できれば、と思い書かせていただきました。本文中にも書かせていただきましたが「明日は我が身」です。記事では私の稚拙な文章を上手くまとめていただいていますので、そちらを是非ご覧ください。念のため、原文を載せておきますね。

Q1. 赤ちゃんの車内放置により、どのようなメカニズムで具合が悪くなりますか?最悪の場合、死に至ることもありますか?

赤ちゃんは、大人に比べて体温調節機能が十分に発達していないため、暑さに弱くなっています。特に、汗をかく機能が発達していないため、大人に比べて汗をかき始めるまでの時間が長く、体温を下げ始める前に熱が体にこもってしまい、体温が上昇しやすくなります。また、赤ちゃんに限らず、思春期前の子供は汗がかけない分、皮膚の血管を拡張させて熱を放散することで体温を調節しようとします(子供が暑い中で顔を真っ赤にして遊んでいるのはそのためです)。しかし、身体の温度より外の温度の方が高ければ、逆に熱が外から中に入ってきてしまい、熱を放散することができなくなってしまうのです。さらに、子供は大人よりも全身に占める水分の割合が高く、一度汗をかき始めるとより多くの汗をかくため、あっという間に脱水症状を起こしてしまいます。特に、チャイルドシートに座っている子供は背中に汗がこもって体温が上がりやすくなり、熱中症のリスクが極めて高くなります。

この「熱のこもりやすさ」「脱水症状の出やすさ」のダブルパンチのため、赤ちゃんの熱中症は、急速に進行する危険性があります。日本救急医学会の発表した『熱中症診療ガイドライン2024』では、熱中症の重症度をⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と分類し、さらにⅢ度の中の「深部体温が40℃以上」「意識状態が悪い」ものをⅣ度として、注意喚起を行っています。Ⅳ度の場合、心臓、肺、腎臓、肝臓、脳などの重要な臓器に強いダメージを与えてしまい、適切な対応がとられない場合は約80%の人が死に至ると言われています。乳幼児を社内に放置した場合、短時間でも急速にⅣ度まで進行してしまうことがありますので、最大限の注意を払う必要があります。

Q2. 車の車内温度がどれぐらいになると赤ちゃんの身に危険が生じますか?発見時に赤ちゃんがぐったりしていた場合の応急処置の方法、最善の方法をお教えください。

最近、『暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)』が一般的になってきました。熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標で、日本生気象学会はWBGT25以上を『警戒』、28以上を『厳重警戒』、31以上を『危険』と規定しています。日本自動車連盟(JAF)が、2012年8月、気温35℃の状態で車内のエアコンをオフにした場合のWBGTの変化を報告しています。その結果、エアコンをオフにした5分後にはWBGTが警戒レベルの25を超え、10分後には28、15分には31を超えていました。最初25℃だった車内温度は5分後には約30℃、30分後には約45℃まで上昇しています。赤ちゃんの場合、5分の放置でも熱中症のリスクが高まり、30分の放置では命の危険もあると覚えておいてください

車内温度/夏(JAFユーザーテスト) | JAF

一般的に、熱中症は意識の状態や水分がとれるかで対応が変わりますが、赤ちゃんの場合はいずれも評価することが難しいです。そのため、発見時に赤ちゃんがぐったりしている場合は、Ⅲ度以上の状態と考えて対応する必要がありますので、迷わず救急車を呼んでください。救急車を待つ間も、ただ待っているだけではいけません。まずは熱くなっているチャイルドシートから子供を外し、クーラーが効いている屋内の部屋で、仰向けに寝かせてください。救命のためには人員も必要ですので、近くのお店やオフィスに助けを求めることを躊躇しないでください。体を締め付けるような衣類は極力脱がし、保冷剤や濡れたタオルで首、脇の下、太ももの付け根、手のひらや足の裏など、血液の流れの豊富な場所を冷やしてください(「冷却シート」では効果がありません!)。乾く前に体を濡らし続け、うちわや扇風機で風を送り続けて下さい。水分が飲めるようなら積極的に水分ととらせて下さい。赤ちゃん用の経口補水液『アクアライト』や授乳中の場合は母乳やミルクがあればベストですが、無ければ水でも構いません。ただ、意識が悪かったり吐いたりしているときは誤嚥の可能性もありますので、無理強いはしないようにしてください。救急隊が到着するまでは、ひと時も気を抜いてはいけません

もしかしたら、貴方が他の車の中に放置された赤ちゃんを発見するかもしれません。すぐに親御さんが戻ってくるとも限りませんので、その場を離れないようにすることが大切です。エンジンが切れている、赤ちゃんが汗だくになっている、激しく泣いている、ぐったりしているなどの場合は緊急性を要します。現場がお店の駐車場なら管理者に連絡を試みましょう。店内に親御さんがいる可能性も高いですし、少なくとも人を集めることができます。さらに緊急性が高いと考えた場合は、警察や救急に連絡し、指示を受けることも考えて下さい。

Q3.赤ちゃんの被害をどう防ぐべきなのか。注意喚起・啓発メッセージがあればお聞かせください。

以前から「パチンコに熱中し過ぎて車内に子供を放置!」なんて事件はありました。しかし、最近は予想を上回る夏の暑さの影響で、短時間の車内放置でも命の危険を伴うようになっています。さらには、幼稚園などの送迎バスの中に置き去りにされて熱中症により死亡、といった、痛ましいニュースを聞くこともあります。「その子は、どんなに苦しかっただろう」と思うと、胸が張り裂けそうになります。もちろん、お子さんを車に乗せて、一人で出かけなければいけない親御さんの大変さもよく分かります。「短時間だから大丈夫」「せっかく寝ているのに、起こしたらかわいそう」「乗り降ろしが大変」「今日はそんなに暑くないから大丈夫」といった心理が働くことも容易に想像がつきます。また、3割程度の方は実際にお子さんを車内に放置したことがある、といった報告もあります。報道に触れるたびに「子供を置いていくなんて信じられない」「自分なら絶対そんなことはしない」といった批判的な感想を持つかもしれませんが、「明日は我が身」と考えておかなければなりません。

こういった危険から子供たちを守るため、『児童虐待の防止等に関する法律』では「保護者がその監護する児童に対し、長時間の放置することや、保護者としての監護を著しく怠ること」を『児童虐待』としています。また同法では「発見した者全てが児童相談所等に通報の義務がある」とも定められています。親だけではなく、みんなの目で子供たちを守っていかなければいけません。ただ、こういった法的な厳しさは、「放置したことを攻められるのではないか」といった、自己保身的な思考を生む可能性があります。恐らく、発見した時は混乱して頭が真っ白になっていると思いますし、そんな中で「もしかしたら大丈夫かも」といった甘い考えが浮かんでしまうかもしれません。繰り返しになりますが、「熱中症は死んでしまう病気」です。対応にやり過ぎはありません。貴方の大切なお子さんを守るため、最大限の対応を行ってください。もし、「私は絶対やらない」と思っている方がいたら、その思い込みを今すぐ捨ててください。「私ももしかしたらやってしまうかも」という危機感を常に持っておくことが、不幸な事件を減らす一番の方法なのです