連日溶けそうな程の暑さが続いてますね。新型コロナウイルスの再拡大の中、熱中症の患者様も大勢来院されて、昨今の報道の通り当院の外来も大賑わい(?)です。そういった中、生活習慣病などでかかりつけの方、ワクチン接種のみに来院される方、ストレス関連の症状で定期的に受診して頂いている方など、いつも以上にお待たせしてしまっています。文句も言わずお持ちいただいて、本当に感謝しかありません。有難うございます。
さて、沢山ご来院いただいている中で、最近「何となく調子が悪い」という方もちらほらいらっしゃいます。中にはコロナの感染症を心配されて受診される方もいらっしゃいますが、私の印象では、相当数「隠れ脱水」の方がいらっしゃると思います。今回、偶然『FNNプライムオンライン』の『名医のいる相談室』(←めちゃくちゃ抵抗のある名前ですが💦)で、「隠れ脱水」につき話す機会をいただきました。長尺でダラダラと話していますが、お時間がありましたら是非ご覧ください。
FNNプライムオンライン『名医のいる相談室』:夏ばての裏に「隠れ脱水?」
本当はここで取り上げたかったのですが、時間の関係で言えなかったことを少し。よく、「熱中症予防には何を飲めばいいのですか?」という質問をいただきます。「アルコール以外、飲まないよりはマシなんで、何でもいいですよ」なんて言うこともありますが、これでは身も蓋もないので、ちょっと真面目にまとめてみます。
まず、原則的に「水分と合わせて塩分も摂取できるもの」であることが大切です。厚生労働省の『職場における熱中症対策マニュアル』では、「少なくとも、0.1~0.2%の食塩水又はナトリウム 40~80 ㎎/100 ㎖のスポーツドリンク又は経口補水液等を、20~30 分ごとにカップ 1~2 杯程度は摂取することが望ましい」としています。要するに「飲み物100mlあたり食塩0.1~0.2g」です。ここは是非押さえておいてください。
身近な飲み物としては麦茶がお勧めです。多少ミネラルを含んでいますし、ノンカフェインなので心臓に病気のある方やお子さんでも安心して飲めます。また、麦茶の原料である大麦は体温を下げる効果がありますので、その点でも熱中症向きです。ただ、麦茶自体には肝心の塩分がほとんど含まれていません。麦茶1リットルに塩1~2g程度を混ぜると効果的です。さらにお勧めなのが、麦茶にはちみつと梅干を入れる飲み方。3日程はちみつに浸した梅干しとはちみつ大さじ1杯を麦茶に溶かしてみて下さい。麦茶に足りない塩分補給に加え、梅干しの持つクエン酸による疲労回復、はちみつのビタミンなど、完璧な「夏バテ防止ドリンク」になります。
スポーツドリンクは、汗で奪われるミネラルと、熱で奪われるエネルギーを補充することができる、有効な飲み物です。ところで、一口でスポーツドリンクと言っても、大きく二つに分かれることはご存じでしょうか?その飲み物の「浸透圧」によって分けられており、体液とほぼ同じ浸透圧の「アイソトニック飲料(ポカリスエット、アクエリアス、グリーンダカラなど)」と、体液より低い浸透圧の「ハイポトニック飲料(バーム、アミノバイタルなど)」の二種類です。どちらで水分補給をしても問題ありませんが、普段の補給や足がつった時などには水分、塩分、糖分のバランスがいいアイソトニック飲料、脱水気味で体液が薄くなっている時には水分の吸収が速いハイポトニック飲料がより効果的です。
ちなみに、アイソトニック飲料は総じてカロリーが高いのですが、これは主に糖分によるものです。エネルギー補充にはいいのですが、糖尿病の方がこれだけで水分を補うのは、糖分過多になり避けた方が無難です。また、浸透圧が高いため、お腹の負担になりますので、夏バテで胃腸の調子が落ちている方にもお勧めできません。さらに、ポカリスエットはカリウムの含有量も多いので、腎機能の悪い方は控えるようにして下さい。
経口補水液はスポーツドリンクよりもミネラルが豊富に含まれています。また、糖分が少なく、水分とミネラルの吸収が速くなる作りになっています。水分補給には最適ですが、甘みが少なく塩分が約0.3g程度と多めなため、普段飲みには向いていません。
これらの飲み物がご自宅にない時は、経口補水液を自分で作ることもできます。水1リットルに砂糖40g(大さじ4.5杯)と食塩3g(小さじ半分)を溶かして下さい。ミネラルのことを考えれば、レモン果汁を加えるとより効果的です。
脱水の補正に向かない飲み物もあります。アルコールは利尿作用があるので、逆効果です。カフェインの入っているお茶やコーヒーも利尿作用があるので要注意です。牛乳は体温を上げて発汗を促す作用があるため、熱中症対策には不向きと言われています。ジュースは悪くありませんが、毎日の補充に使うには糖質が多すぎますので、糖尿病の方などは注意が必要です。
まとめてみるとこんな感じです。
例年以上に健康管理が大変な年です。新型コロナウイルスに対するワクチンはもちろん、熱中症に対しての普段の備えもお忘れなく。