昨今のがん治療の進歩は凄まじく、従来の「手術」「化学療法(抗がん剤等)」、「放射線療法」に加え、「分子標的治療」も一般化してきました。さらに「光免疫療法」、「がんウイルス療法」、「CAR-T療法」といった新しい治療選択も生まれつつあります。しかし、がん全体の死亡数をみてみると、2020年に37万8385人で、全死亡数の27.6%を占めています。残念ながら、1981年以降39年間連続で死因のトップになっています。
出典:厚生労働省「2020年人口動態統計(確定数)」
また、2009~2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計で64.1 %(男性62.0 %、女性66.9 %)、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性で65.5%、女性51.2%(2019年データ)、がんで死亡する確率は男性で26.2%、女性で17.7%(2021年データ)と報告されています。実に、一生のうちに2人に1人はがんと診断され、そのうちの2割程度の方ががんで亡くなっているのです(国立がん研究センターデータより)。
まだまだ「死を意識しないといけない病気」であるがんですが、これは、「どの段階でがんが発見されるか」によって大きく変わってきます。ステージ別の生存率をみると、どのがんもステージが進むごとに生存率が下がっていくことが明らかです。とにもかくにも「早期発見・早期治療」です。
健康ひょうご21県民運動ポータルサイト (kenko-hyogo21.jp)より
がんの早期発見のために有効なのはもちろん「がん検診」です。がん検診でがんが発見された場合は、体調不良による受診などで結果的にがんが発見された場合に比べ、5年後の生存率が高いという調査結果も報告されています。
がん検診でがんが発見された場合と、それ以外の場合での5年相対生存率
がん研究振興財団「がんの統計’05」 1993~96年診断患者(宮城・山形・新潟・福井・大阪・長崎)集計結果
では、どれぐらいの頻度でがん検診を受ければいいのでしょうか?この質問を言い換えると「がんを早期の段階で拾い上げるには、何年毎に検査すればいいの?」ということになります。がんの種類にもよりますので一概には言えませんが、例えば乳がんの場合、1つのがん細胞が1㎝の大きさになるまでに約15年かかります。この段階で見つかればラッキーなのですが、一般的に1㎝以下のがんを通常のがん検診で見つけるのは難しいです。乳がんの場合2㎝までは早期がんですので、1㎝から2㎝まで大きくなっている時期に見つける必要があります。「じゃあ、次の15年の間に受診すればいいか」となりそうですが、全く違います!実は、1㎝まで大きくなったがんの増殖スピードは急に速くなり、2㎝になるまではわずか1年半しかかかりません。そうなると、早期の段階でがんを見つけるためには、少なくとも2年に一回のがん検診が必要になるのです。もちろん、このペースで受診できれば一番いいのですが、時間と値段を考えるとなかなか・・・。また、「検査のオプションが多すぎて、何を選べばいいか分からない!」なんてこともあると思います。
こういった状況も、昨今の医学の進歩で少しずつ解消されつつあります。皆さんも「血液1滴で13種類のがんを発見」とか「尿1滴で分かる!線虫検査」なんてフレーズを聞かれたことがあると思います。どの検査も手軽で、かつ早期の段階でがんを拾い上げられる検査のようです。そういった検査の中で、当院では「miSignal(マイシグナル)」という検査を導入しました。
miSignalは、「お手軽」「高精度」「痛くない」と三拍子そろった新しい検査で、名古屋大学のベンチャー企業が慶應義塾大学腫瘍センターゲノム医療ユニットと連携し提供しています。全国約20の大学病院やがん研究センターが共同研究に参加している、信頼性の高い検査です。がんの組織が正常の組織とは異なる物質を放出・増殖し、その物質の一部が尿の中に輩出されることが分かっています。がんがあると早い時期から特徴的な発現パターンを示す「マイクロRNA」をAIで解析することにより、7つのがん(肺、食道、胃、大腸、膵臓、乳房、卵巣)について、現時点でかかっている可能性を高確率で検出します。「なぜ尿?血液の方が確実じゃない?」と思われるかもしれませんが、尿から採取されるマイクロRNAは、血液から採取されるマイクロRNAに比べ組織との相関が高いことも分かっています。そのため、尿中マイクロRNAは現在の体の状態を見るのにより適していると言えます。
よく知られている「腫瘍マーカー」は保険適応もあり一般の外来でも比較的手軽に行うことができますが、早期のがんの拾い上げには不向きです。腹部超音波検査やCT検査などの「画像診断」もがんを発見するための手段の一つですが、基本的には「疑った時に初めて行う検査」ですので、初期に症状の出にくいすい臓がんや卵巣がんの場合は、画像診断を行った時には既に進行していることが多いのも実情です。
繰り返しになりますが、がんの治療の予後を改善する最大のポイントは「早期発見・早期治療」です。特に、先ほど挙げた膵臓がんや卵巣がんなどは、早期発見が難しく初期症状がほとんどないまま進行してしまい、手遅れになるケースが多くあります。miSignalは、がん細胞が発するマイクロRNAを解析しているため、早い段階からがんを発見できる可能性があります。早い段階でリスクを知ることでより詳しい検査を受診でき、予防のためにできることを実践するこができます。以下に、改めてこの検査の特徴をまとめてみます。ご興味のある方は是非利用してみて下さい。
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