「知ってて得するコモンディジーズ―糖尿病①」では、糖尿病の大まかな概要を説明させていただきました。第二回の今回は、糖尿病を理解する上で大切な「糖はどのように吸収されていくか」について学んでいきましょう。
私たちは色々なものを食べて、様々な栄養素を体の中に取り入れています。それぞれの栄養素は直接体の中にとり込まれていく訳ではありません。消化器官(口→胃→十二指腸→小腸)から出る様々な酵素で分解(『消化』)されて、体が栄養を『吸収』できる状態にしていきます(ちなみに食道は食べ物を胃に送り込む働き、大腸は水分を吸収して便を作る働きをしています)。様々な栄養素は色々なものに分解されますが、今回は血糖値に関係する『でんぷん』と『糖』についてまとめてみます。
まず口の中。あまり意識することがないかもしれませんが、口(口腔)も立派な消化器官です。唾液の中に含まれているアミラーゼという酵素により、一部のでんぷんがデキストリンとマルトースという物質に分解されます。でんぷんは、噛めば噛むほど吸収されやすくなりますし、アミラーゼの分泌も増えます。そのため、血糖値の上昇を穏やかにする最初の作業は『よく噛むこと』なんです。ちなみに、この時点で糖は分解されません。
胃の主な働きは「食べ物を消化しやすい形にすること」で、栄養の吸収はほとんど行われていません。もちろん、でんぷんも糖もあまり吸収されません。
十二指腸も、主な役割は消化しやすくすることです。もう少し言えば、十二指腸は膵臓から分泌される膵液や、肝臓で作られて胆嚢に蓄えられる胆汁をシェイクして、胃で消化しやすくなった食べ物を、さらに消化しやすくします。この段階までは、糖はほとんど吸収されていません。
糖の取り込みの主役は小腸です。糖は、マルターゼやスクラーゼといった酵素により『ブドウ糖』や『果糖』に分解され、小腸上皮から吸収されます。糖には様々な形があるのですが、ブドウ糖や果糖は『糖分の最終形態』で、この状態になって初めて体の中に吸収されるわけです。
なんか講義みたいになってしまいましたが、もう少しお付き合いをm(_ _)m 小腸から吸収されたブドウ糖は、血液の流れに乗って各臓器に運ばれていきます。基本的にはエネルギーとして利用するためですが、中には「もしもの為の蓄え」の目的で運ばれる臓器もあります。前者は『脳』、『赤血球』、『腎臓』といった場所で、インスリンが有ろうが無かろうがエネルギーとして利用できます(いちいちインスリンの影響を受けていたら、体の働きを維持できませんからね)。後者は『肝臓』、『筋肉』、『脂肪』です。
- 肝臓:グリコーゲンとして貯蔵
- 筋肉:グリコーゲンとして貯蔵するとともに、エネルギーとして利用
- 脂肪:中性脂肪として蓄積
肝臓と筋肉が『貯蔵』なのに対して、脂肪が『蓄積』と表現が違うところに注目して下さい。肝臓や筋肉は、もしものために貯め込んでおく必要のある場所なのに対して、脂肪はその余ったものを“仕方なく”ストックしておく場所なんです(前回書かせていただいた通り、本来動物は余分な糖をため込む必要はないハズなんです)。そして、ここが非常に大切なところなのですが、肝臓と筋肉と脂肪は、ブドウ糖を取り込むのにインスリンが不可欠なんです。
このような絶妙な経過を経て、食べ物はブドウ糖として各臓器に届けられ、エネルギーとして利用されたり、蓄えられたりします。そして、これもまた絶妙なバランスで血液中の糖の濃度(血糖値)を維持するのですが、様々な理由で『インスリンの作用不足』が起こって・・・って、ボリュームオーバーになってしまいましたので、今回はここまでにしておきますね。