「血圧って、どうやって測ればいいんですか?」という質問をよくいただきます。これ、お医者さんも結構知らないんです。特に、電子血圧計での正しい測り方などは授業で習うことがありませんので尚更です。
いきなり脱線します。1733年、イギリスのステファン・ハーレスが馬の首の血管に管を直接差し込み図のように4m近い長さのガラス管につないだところ、血液はガラス管の中で 290cmの高さまで上昇しました。これが歴史上初めての血圧測定と言われています。人間での初めての血圧測定は1828年ですが、この時も細い管を血管に差し込んで水銀柱に圧力を導く方法・・・痛そうですね(-_-;) ちなみに、現在皆さんが病院などで聴診器を使って測定してもらう方法は、1905年に発案されました。
本題に戻りましょう。血圧測定には『聴診法(コロトコフ法)』と『オシロメトリック法』の二つの方法があります。簡単に言ってしまえば、病院で聴診器を使って測ってもらうのが『聴診法』で、自動血圧計で測るのが『オシロメトリック法』です。『聴診法』は腕に巻き付ける腕帯に空気を送り込み、いったん血流を止めます。そこから少しずつ空気を抜いていき、血流が再開した時の血管音(コルトコフ音)と、消失した時の圧を測定します。それに対して『オシロメトリック法』は、動脈の拍動に伴って規則的に発生する振動の変化をセンサーで測ることで血圧値を割り出します。以前の血圧計はこのセンサーの感度がイマイチで誤差も多かったようですが、今の自動血圧計は精度も高く、聴診法との誤差はほとんどありません(ちなみに、高価な自動血圧計の中には高感度マイクが内蔵されていて、聴診法で測定しているものもあります)。
あと、よく質問される一つに『測定の場所』があります。上腕で測るタイプの他、手首や指で測るタイプもありますが、正解は「右心房と同じ高さ」――分かりにくいですよね(^^;) 基本は上腕ですが、他の測定部位の場合は出来るだけ心臓の高さに合わせるようにしましょう。
その他のポイントを日本高血圧学会の「家庭血圧測定条件の設定」を参考にまとめます。
●測定のタイミングは? ⇒ 朝と晩の二回測定します
- 朝の測定:起床後1時間以内・朝食前・服薬前・排尿後(排尿する前は血圧は高く、排尿後下がります)・座位で1~2分安静
- 晩の測定:就寝直前・座位で1~2分安静
●測定は右腕?左腕? ⇒ 右腕での測定が一般的です
- 心臓に近い大動脈から出ている血管が右の腕につながっているため、右腕での測定がより正確と言われています。
- 臨床研究の結果、血圧を左右の腕で同時に測った場合、たいていは右腕のほうが高くなると報告されています。
- しかも、高齢者になるほど左右の差が大きくなるため、左腕で測ったために高血圧を見逃してしまう危険性もあります(自動血圧計の説明書には、測定のし易さを優先して「利き手の反対で測定」としているものもあります)。
●一回の測定回数は? ⇒ 1機会原則2回測定します
- 理想は1回の測定機会で2回以上測定し、その平均をとります。
- ただ、継続することが大切なので1機会1回のみ測定した場合には、1回のみの血圧値をその機会の血圧値としても結構です。
- ちなみに、血圧を記録する際は、時刻と心拍数も記載しておきましょう。
●血圧の測定間隔は? ⇒ 週に5日以上測定して下さい
- 一日一日の血圧をみて、「今日は上がった」「下がった」と気にしすぎるのはよくありません。
- 週に5日以上測定し、1ヵ月、1年など一定期間の血圧の変化を観察しましょう。
高血圧は自覚症状なく徐々に進行する『サイレントキラー』です。効率よく戦うためには、まず相手を正しく知ることから始めましょう。