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『はしか』の対策は正しい知識の取得から

 

最近テレビや新聞で『はしか(麻疹)』についてのニュースをよく見かけます。もともと沖縄県では断続的に患者さんの数が増えていたのですが、その事自体はあまりニュースになっていませんでした。沖縄旅行から帰ってきた名古屋市の10代の男性が4月11日にはしかの診断を受けて以来、その方が立ち寄った場所や医療機関を訪れた方々から次々と感染が報告されたため、現在の騒ぎになってしまいました(もちろん、その男性に罪はありません)。

 

そもそも、『はしか』は有名な割に、それほど頻度の高い病気ではありません。2015年3月27日には、日本のはしかに対して世界保健機関(WHO)から「排除状態」(日本に土着するウイルスによる感染が3年間確認されない状態)が出されています。これは、間違いなく長年に渡る予防接種制度の成果です。現在問題になっているのは海外から入ってきた『輸入はしか』で、沖縄で流行しているのは恐らく台湾から入ってきたものと推測されています。

 

はしかの症状について確認しておきましょう。一般的には4つの時期に分かれます。

 

1.潜伏期(10~12日)

ウイルスが体に入ってきてから、実際に症状が出るまでの期間です。当たり前ですが、この時期に気付くことは不可能です

 

2.カタル期(3~4日)

熱・鼻水・痰・咳など、いわゆる風邪と同じ症状です。一般的にはしかでみられる湿疹は、この段階で認められませんので、この時期にはしかの診断をすることも難しいです。ただ、鼻水や痰の中には麻疹ウイルスが含まれているので、うつる可能性が最も高い時期です。この時期にほっぺたの内側に、周囲が赤くて真ん中が灰色の斑点(コプリック斑)を認めることがありますので要チェックです。

 

3.発疹期(3~4日)

カタル期の終り頃に一度熱が下がり始めますが、再び40℃近くまで上昇するとともに、全身に小さな赤いプツプツが出てきます。典型的には顔や耳の後ろから始まり、胸・背中・お腹といった体の中心から手足へと広がっていきます。湿疹どうしがくっついて色々なタイプの湿疹になるのも特徴です。

 

4.回復期(7~9日)

熱が下がるとともに湿疹も消えていきますが、肌に色素が沈着して茶色になります(いずれ消えますので大丈夫です)。

 

 

とにかく問題になるのが、その感染力の強さです。感染経路は空気感染の他、飛沫や接触感染など様々で、免疫がない集団に1人の発症者がいた場合、12~14人程度に感染するとされています。これはインフルエンザの約10倍です。また、感染した人の90%以上が発症してしまうのも厄介なところです。感染の時期はカタル期の1日前から湿疹が出現した後4~5日目ぐらいまでです(ちなみに、学校は解熱後3日までは出席停止になります)。

 

基本的には自然に治るので問題ありませんが、通常の風邪に比べてかかっている間とその後しばらくは免疫力が落ちているので、他の感染症にかかりやすくなることには注意が必要です。また、ごく稀ではありますが、感染から約10年後に記憶障害や痙攣といった症状から始まる「亜急性硬化性全脳炎」という病気を発症することもあります。やっぱり、自然に治るからって侮れませんね。

 

よくいただく質問は「自分は予防接種をうつ必要がありますか?」というものです。これは、国の予防接種政策の変遷を受けて少し複雑です。とりあえず、大人の方に関してまとめてみます。

 

<1977年4月1日以前に生まれた世代>

 

長野五輪モーグル金メダリストの里谷多英さん(1976年6月12日生まれ)、女優の観月ありささん(1976年12月5日生まれ)、元サッカー日本代表の中田英寿さん(1977年1月22日生まれ)よりも年上の世代です。この世代は任意接種でしたので、一度も接種していない可能性があります。ただ、自然に免疫を獲得している場合が多いです

確実にかかっていることが分かっていれば接種不要です。分からない場合は免疫がついているか調べるか、接種することをお勧めします。

 

<1977年4月2日~1990年4月1日に生まれた世代>

 

国民栄誉賞を受賞した囲碁の井山裕太さん(1989年5月24日生まれ)、テニスプレイヤーの錦織圭選手(1989年12月13日生まれ)、女優の黒木華さん(1990年3月14日生まれ)よりも上の世代です。この世代は1回接種法ですので、既に免疫が切れている可能性が高く、最も感染の危険が高い世代です

確実にかかっていることが分からなければ、早めに接種することをお勧めします

 

<1990年4月2日以降に生まれた世代>

 

フィギアスケーターの浅田真央さん(1990年9月25日生まれ)、シンガーソングライターのmiwaさん(1990年6月15日生まれ)よりも下の世代です。2回接種が義務付けられていますので、基本的には免疫が付いているハズです

⇒母子手帳を確認して、2回接種歴がないときは、早めの接種をお勧めします。

 

 

予防接種は自費になり、当院では麻疹・風疹の混合ワクチン(MRワクチン)を8,000円(税込)で行っています。ご希望の方は事前に連絡をお願いします。また、こちらも保険適応はありませんが、免疫がついているかどうかを判断する血液検査も行っていますので、是非ご利用下さい。なお、妊娠、もしくは妊娠の可能性のある方は接種出来ないのでご注意下さい。

 

 

残念ながら有効な治療法はなく、症状に合わせて脱水予防の点滴や、解熱剤、咳止め等で症状の緩和を行います。診断のための血液検査はありますが、結果が出るまで一週間程度かかります。インフルエンザのような迅速検査はありませんので、その場で確定診断することはできません。受診の際には、まず電話連絡をして「はしかの患者さんと接触した可能性があり、いつ頃からどんな症状がある。」と伝えて下さい。そして、これが最も大切なのですが、受診に際してはバスや電車など公共交通機関の利用は避け、人が集中する場所(スーパー、コンビニ等)には極力立ち寄らないようにして下さい。はしか対応のメインは「感染拡大の防止」なのです。

 

 

ゴールデンウィークで沖縄に行かれる方も増えますし、その方々と接する方もかなりの数に上ると思います。潜伏期間が過ぎた5月中旬からは要注意!でも、巷の情報に惑わされることなく、冷静に対応しましょう(^-^)/

 

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