「今年の冬は暖かいですね~」なんて話していたら、急に冷え込んできましたね。今までの暖かさで今シーズンはインフルエンザも大人しくしてくれていたのですが、ここ一週間いっきに患者様も増えてきました。一度流行り出すとあれよあれよという内に感染が拡大していきます。感染予防と感染した時の注意点に関しては、以前このブログ(インフルエンザが大流行しています)でも詳しく説明していますので、そちらをご覧下さい。
さて、今年のインフルエンザ治療、もしかしたらこれまでと大きく変わるかもしれません。というのも、今年の3月に新しい抗インフルエンザ薬『ゾフルーザR』が発売されたからです。この薬、世界に先駆けて日本で販売されたのですが、作用の仕方が今までの抗インフルエンザ薬と大きく違う画期的なものです。
この薬の話をする前に、一般的な抗インフルエンザ薬の効果について確認しておきましょう。ポイントは以下の4つです。
- 有症日数が1日程度短くなる
- 合併症(肺炎など)は減少しない
- 死亡率は下がらない
- 他人への感染を減らすというデータもない(感染期間は縮まらない)
結構誤解されている方も多いのですが、抗インフルエンザ薬は、飲んで直ぐ効く訳ではありません。飲む方の免疫力により違いがありますが、イメージとしては「何も飲まないと3日高熱が続くけど、インフルエンザの薬を飲めば2日になる」といった感じです(飲んで翌日熱が出ていてもご安心ください)。残念ながら、合併症や死亡率、感染力を減らすといったデータもありません。
先ほどの薬の発売もニュースなんですが、今年はもう一つのニュースがありました。2005年頃を中心に、抗インフルエンザ薬の代表だった『タミフルR』を飲んだ小児の異常行動報が何例か報告されました。異常行動との因果関係が不明で、タミフルRは長きにわたり“容疑者扱い”をされていましたが、2018年8月21日に厚生労働省から「タミフルと異常行動の因果関係は明らかではない」という発表がされました。タミフルの容疑が一応晴れたのですが、異常行動が起こらないと言っている訳ではなく、「小児がインフルエンザにかかった場合、少なくとも二日間は目を離さない事」という補足勧告がされています。
さて、随分遠回りしましたが、最後に『ゾフルーザR』について。「作用の仕方が違う」と書きましたが、詳しく話し出すと小難しくなりますので、下のイメージで。
分かりにくいですかね(^^;) 簡単に言えば、今までの薬が「増えたウイルスを出口の所で留めて、自分自身の免疫が反応するまで待つ」という『門番』のような役目なのに比べ、新しい薬は「細胞の中で増えるウイルスを、細胞の外(血液の中)に出ていく前に徹底的に倒す」という『先発部隊』のような役目なのです。もっとも、「有症日数が1日程度短くなる」というところは変わりませんので、「今までより自覚症状を大幅に改善する!」という訳ではありません(残念ながら、そこまでの万能薬ではありません💦)。この薬の凄いところは以下の2点です。
① 飲んだ翌日に、人に感染させるレベル以下までウイルス量を減らす(飲んで24時間後に接してもうつらない・・・かもしれません)。
② 免疫部隊が発動するのを待つ必要がないので、飲む人の免疫力が高くない人(糖尿病、高齢者、抗がん剤を使用している人、免疫抑制剤を飲んでいる人など)にも良く効く可能性がある。
①は“感染拡大”という点で大きなポイントになります。「クラス中に広がって学級閉鎖」「家族全員にうつって、家族旅行の予定がおじゃん」なんてことが減るかもしれません(ただし、学校への出席停止期間に関しては、「発症後5日間、もしくは解熱後2日間」という学校保健安全法の縛りがありますので、現時点ではこちらが優先されます)。②に関してはまだしっかりした臨床データが出ていませんが、理論的にはほぼ間違いなく、今後のデータ蓄積が待たれるところです。
今回はややボリュームオーバー(;^_^A 感染予防ももちろん大切ですが、感染拡大のためにも、是非早めに医療機関を受診して下さい。
今年最後の更新になると思います。本年も大変お世話になりました。皆様、健やかに新年をお迎え下さい。