突然ですが、「生きていくために最も必要な臓器はなんですか?」と聞かれたら、何と答えますか?多分、多くの方が「心臓」と答えられるんじゃないかと思います。それ以外には「脳」や「肺」なんかが候補に挙がってくるかと思います。もちろん、どれも大切な臓器ですが、同じ質問をお医者さんにしたら「腎臓」と答える人が多いんじゃないかと思います。極端に言えば「人が食事をしたり空気を吸ったりするのは全て尿を出すためで、尿が出なくなったらオシマイ」なんです。ですから、入院で重症管理をさせていただいていた時は、とにかく尿量を保つことに多くの力を注いでいました。
という訳で、今回の主役は『腎臓』です。腎臓は尿を作るだけではなく、様々な仕事をしています。主な仕事は以下の通りです。
① 老廃物を体から出す
② 血圧を調整する
③ 赤血球を作る
④ 体液量・イオンバランスを調節する
⑤ 強い骨を作る
①はまさに尿を出す目的。血液をろ過して老廃物や塩分を尿として外に追い出します。また、身体に必要なものは再び吸収して、身体に留める働きもしています。②は塩分と水分の量をコントロールすることによって血圧を調節します(だから、腎臓が悪くなるとお医者さんは「塩分を控えて下さい」と言うんです)。③はあまりピンときませんよね?貧血の時に話題になる赤血球。これは、骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)の刺激を受けて作られるんです。そのため、慢性的に腎臓が悪い方は、赤血球が十分に作られない「腎性貧血」という状態になります。④は①、②とも共通するものですが、体内の水分量やイオンバランスを調節したり、必要なミネラルを身体にとり込んだりしています。⑤も意外に思われるかもしれませんが、腎臓は骨を作るためのカルシウムを体内に吸収するために必要な活性型ビタミンDを作っています。
とにかく、腎臓はとっても働き者の何でも屋さん。オシッコを作るだけの地味な臓器ではないんです( `―´)ノ
日本における腎臓病患者さんの数は約1,300万人、成人の8人に1人の割合と推定されています。腎臓の障害は急に悪くなる『急性腎障害(AKI)』とゆっくり進行する『慢性腎臓病(CKD)』に分かれます。特に問題になるのがCKD。進行すると怠さ、むくみ、ふらつきなどが出現し、さらに重症化するとミネラルの過剰による致死的不整脈や、水分を対外に出せないことによる心不全、毒素を処理できないための尿毒症など、重大な状態を招きます。この“進行すると”というところが厄介な点!初期にはほとんど症状がないんです。腎臓の障害は、早期に治療を開始すれば進行を抑えられ改善できる可能性もあがりますが、症状が進行してしまうと人工透析や腎移植以外の有効な治療法がなく、生活の質が大幅に落ちてしまいます。とにかく「症状がない時にどれだけ気にしているか」が全てなんです(「足がむくんでないから自分の腎臓は大丈夫(・ω・)ノ」といった発想はアウトですよ!)。
では、腎臓の障害を早期に見つけるにはどうしたらいいか?ボリュームオーバー気味なんで、別の機会にお話ししますね。