インフルエンザが猛威を振るっています・・・って、もうこの「〇〇が猛威を振るっています」って聞き飽きましたよね汗 新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以降、その他多くのウイルスの流行を認めています。通常、一つのウイルスが大流行すると他のウイルスの流行が抑えられる(ウイルス干渉)ことが多いのですが、今の状況は、それぞれのウイルスが少しずつ形を変えて(変異)、上手に住み分けているような印象です。また、徹底した感染対策により、若い世代を中心に免疫力が低下していることも、感染拡大に歯止めがかからなくなっている理由と考えられます。恐らくこの傾向は年単位で続いていくのではないかと思います。

そんな最中、オトナンサー様からインフルエンザワクチンについての取材をいただきました。接種のピークが過ぎたタイミングではありますが、まだ打たれていない人、もしくは来年以降に打たれる可能性のある方の参考になればと思いますので、記事内容を載せておきますね。

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20231210日 Yahoo Newsより)インフルエンザがこの冬に大流行する可能性が指摘されており、すでにワクチンを接種した人は多いと思います。インフルエンザについては、一度もかかったことがない人がいる一方、ワクチンを接種しても感染してしまう人もいます。

そもそも、インフルエンザのワクチンには、どのような効果があるのでしょうか。ワクチンを接種してもインフルエンザに感染してしまう場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。また、「インフルエンザに感染すると、しばらくかかりにくくなる」のは本当なのでしょうか。あんどう内科クリニック(岐阜市)の安藤大樹院長に聞きました。

Q.そもそも、インフルエンザのワクチンには、どのような効果があるのでしょうか。接種してもインフルエンザに感染してしまう場合、どのような原因が考えられますか。

「一般的に、ワクチンに期待される効果は、『(1)感染・発病予防』『(2)重症化予防』『(3)流行抑制』の3つです。そもそも、われわれ医療者がインフルエンザワクチンに最も求めている効果は(2)の重症化予防で、(1)の感染・発病予防に関しては、『半分程度の確率で感染や発病を防げれば御の字』といった認識です。

例え話でその理由を説明すると、ワクチンの役割は、普段、体の中をパトロールしている警備員(免疫)に対して、『こういう顔をした侵入者(ウイルス)が入ってくるかもしれないので、警備体制を強化するように』と、指名手配写真を配るようなものだからです侵入者であるウイルスを死滅させるような武器を配っているわけではありません

Q.では、インフルエンザワクチンの発症予防効果はどの程度なのでしょうか。

「インフルエンザワクチンの発症予防効果は、健康な成人で約60といわれており、はしかや風疹のワクチンとは違い、高い発病予防効果が期待できないことは確かです。これは、『免疫が確実に獲得できない』『シーズン後半まで免疫が維持されない』『実際に流行する株が同じ時期に変異する』など、さまざまな原因が考えられます。

特にインフルエンザウイルスの変異のしやすさが、ワクチンの有効率を下げていると考えられます。インフルエンザウイルスはA型、B型、C型の3種類に分けられていますが、A型に関しては、さらに144種類の亜型に分類されます。これはA型が毎年のように変異を起こしているからです。B型の亜型は2種類で、C型の亜型は1種類です。

つまり、B型は変異の幅が狭いため、過去に一度感染すると免疫を獲得しやすく、2回目の感染時は症状が比較的軽く済むことが多いです。

C型に関しては感染力、症状ともに弱く、臨床的に問題になることはほとんどありません。そもそも一般的な検査キッドで測れるのはA型とB型だけであり、実際の医療現場でC型の診断を行うことは、ほぼありません」

Q.インフルエンザワクチンはどのように製造されるのでしょうか。

 

「毎年、WHO(世界保健機関)がその期間に流行するインフルエンザ株を推測し、それを基に国内の専門家がワクチンの基となる4つのウイルス株(A型2種類、B型2種類)を決めます。その後、製薬会社がその株に基づいてワクチンの製造を開始します。多くの製薬会社はこの流れに沿ってワクチンを製造しており、製薬会社間でワクチンの効果に差が生じることはありません。

専門家はかなり精度の高い予測を基にウイルス株を選んでいるため、大きく外れることはありませんが、他の株が変異して流行するケースがよく見られます。『もっといろいろな種類のA型の株を入れたらいいのに』と思うかもしれませんが、ワクチンに関する法律の一つである『生物学的製剤基準』では、ワクチンに入れてもいい病原体の量が制限されているため、現状ではこれが限界なのです

Q.インフルエンザに感染しやすい人の特徴について、教えてください。

「毎年、予防接種を受けているのに頻繁にインフルエンザにかかってしまう人がいる一方で、一度も予防接種を受けたことがないのに、インフルエンザにかからない人もいると思います。その理由は、医学的に完全に証明されたわけではありませんが、遺伝的な要素が大きく影響しているのではないかといわれています

近年、病原体の感染に影響を与える可能性のある遺伝子が次々に見つかっており、その遺伝子に傷がつくことで、感染症を発症しやすくなることが分かってきました。感染のしやすさがあらかじめ遺伝子で決まっているなら、対策しても無駄だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。

遺伝子にはスイッチのようなものがあって、生活習慣など多くの環境因子がスイッチを入れたり切ったりすることで、遺伝子の作用を調整する『エピジェネティクス』という仕組みを持っています。良い環境因子が働けば、感染しやすくなる遺伝子にブレーキをかけやすくなり感染しにくくなる一方、悪い環境因子が働けば、感染しやすくなる遺伝子のアクセルを踏んで感染しやすくなる、というわけです

また、感染のしやすさの原因として、個人が持っている『免疫力』が重要な役割を果たしていることは間違いありません。人には元来、ウイルスを始めとした病原体と闘うための免疫力が備わっています。この免疫力が低下すると、病原体の感染力に負けてしまい、病気を発症してしまいます。

先述の例え話で説明します。ウイルスが『侵入者』でワクチンが『侵入者の顔写真』だとすると、遺伝子を持っているわれわれは『侵入される建物』で、免疫はそこを守る『警備員』に例えることができます。建物自体を大きく変えることはできませんが、防犯設備を整えること(エピジェネティクス)は可能で、警備体制を強化すること(免疫力を上げること)もできます。

当然、防犯設備の備えや警備体制の強化を怠れば、侵入者であるウイルスが侵入するようになり、感染しやすくなります。その原因の多くは『生活習慣の乱れ』によるものです。『生活リズムが不規則』『睡眠不足』などに心当たりがある人は、インフルエンザをはじめとした感染症にかかりやすいと言えます。

このほか、高齢者や乳幼児、妊婦のほか、『呼吸器や心臓に疾患がある人』『糖尿病の人』『慢性腎臓病の人』『抗がん剤や免疫抑制剤、ステロイドなどの医薬品を使用している人』などは、抵抗力が低下する傾向にあるため、インフルエンザをはじめとした感染症にかかりやすく、重症化のリスクも高くなるため、注意が必要です

Q.そもそも、インフルエンザワクチンの主な効果について、教えてください。どのように製造されているのでしょうか。

「一般的に、ワクチンに期待される効果は、『感染・発病予防』『重症化予防』『流行抑制』ですが、インフルエンザワクチンの場合、主に重症化の予防に効果があるといわれています

毎年、WHO(世界保健機関)がその期間に流行するインフルエンザ株を推測し、それを基に国内の専門家がワクチンの基となる4つのウイルス株(A型2種類、B型2種類)を決めます。その後、製薬会社がその株に基づいてワクチンの製造を開始するのが一般的です。つまり、ワクチンは4種類のインフルエンザの株に対応できるように製造されているのです」

Q.「インフルエンザに感染すると、しばらくはかかりにくくなる」という内容の話をよく聞きますが、本当なのでしょうか。それとも、短期間のうちに再感染するリスクはあるのでしょうか。

「毎年、冬の診療時に『今年はもうインフルエンザにかかったから、もうかからないだろうし、ワクチンも必要ないでしょ?』という会話をよく耳にします。確かに、多少感染しにくくなる可能性はありますし、特に同じ型のウイルスが流行している期間であれば、再感染のリスクは低くなります。

しかし、残念ながら短期間の間に再感染する可能性はあります。なぜなら、インフルエンザはウイルスの型の種類が多く、同じ期間中に数種類の型のウイルスが出現することがあるからです

例えば、インフルエンザは主にA型とB型に分けられますが、A型に関しては、毎年のように変異を起こしているため、さらに144種類の亜型に分類されます。一方、B型の亜型は2種類です。

A型とB型とでは当然ながらウイルスの種類が異なるため、A型に感染して獲得した抗体は、B型に対しては有効に働きません。それどころか、同じA型でもそれぞれの亜型でウイルスの種類が違うため、先に感染したウイルスの型に対してできた抗体は有効ではありません。そのため、同じ期間中にA型のウイルスに2回かかってしまうことがあるのです。

病院で行う迅速検査では、インフルエンザがA型なのかB型なのかを判別できますが、A型のどの亜型に感染しているかについては分かりません。そのため、病院では『インフルエンザA型』とだけ診断され、同じインフルエンザに2回かかったように見えるのです。

さらに、今年は5月ごろからインフルエンザが流行しています。流行の期間が長くなると、その分ウイルスの型が変化する可能性が高くなるため、再感染のリスクも高くなっていくと考えられます

この流れを踏まえると、現在の流行が例年と同じ4月ごろに終息するとは考えにくいため、流行が去ったと油断して感染対策をおろそかにしていると、来年の夏に再びインフルエンザにかかってしまう可能性があります。新型コロナウイルスも季節を問わず流行しているため、手洗いやうがい、マスクなどの感染対策は、毎日の習慣にしておきましょう」

 

Q.インフルエンザに感染した人がワクチンを接種しても問題ないのでしょうか。それとも、感染後に接種しても効果は見込めないのでしょうか。

「厚生労働省が公表する資料には、『一般に、インフルエンザに自然感染した場合は免疫抗体を獲得し、病気の進行(発症)を軽減することは可能と考えられる。そのため、明らかにインフルエンザに罹患した者は、同シーズンにおいては、同株のワクチンを接種する必要性は乏しい』などと記載されています。

そのため、インフルエンザに感染した後にワクチンを接種しても効果がないように見受けられますが、私は接種した方が良いと思います。なぜなら、インフルエンザワクチンは先述の通り、4種類のインフルエンザの株に対応できるように製造されているからです。1つの型に感染しても、残りの3つの型にかかる可能性があるため、ワクチンを接種することである程度の予防効果が期待できます

ちなみに、すでにインフルエンザに感染した人がワクチンを接種した場合、注射針を刺した部分が腫れるなどの反応が出る可能性があるものの、副反応の頻度や程度が増えたという報告はありません。重症化の予防効果がより強くなることが期待されるほか、安全性も高いため、少なくとも、もともと接種しようとしていた人が、感染を理由に接種をやめる必要はないと思います」

 

Q.インフルエンザの感染後にワクチンを接種する場合の適切なタイミングについて、教えてください。

「インフルエンザは、はしかと違い、かかった後に一時的に免疫機能が落ちることはありません。また、インフルエンザワクチンには、病原体となるウイルスの感染力を失わせた『不活化ワクチン』が原材料として使われています。病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたものを使った『生ワクチン』のように、感染ウイルスと干渉して効果が薄れることはありません。

そのため、体調さえ問題なければいつ接種しても問題ありません。目安としては、感染してから1~2週間以降に接種するのがお勧めです」

 インフルエンザに感染後、短期間のうちに再度、感染する可能性があるということです。ワクチンを接種する前に感染した場合、重症化を防ぐ上で接種しておくとよいかもしれません。