最近このブログでは新型コロナウイルスの情報に偏っていますよね。今のご時世を考えると仕方ないのですが、皆さんただでさえ連日メディアからの情報に疲弊しているのに・・・ってちょっと反省です💦今回は、違う内容を扱います。

『帯状疱疹』という病名、聞いたことがある方も多いと思います。「ブツブツした湿疹が出てきて、それがチクチク痛くなって、服が擦れるのも痛くて・・・」って、皆さんのイメージ通りの病気です。ただ、イメージ通りじゃないのはその“痛さ”です。程度の差はありますが、一般的には「夜も眠れなくなる程の痛み」です。痛みのピークが過ぎてもしばらくピリピリ感が続いたり、怖い合併症があったり・・・とにかく厄介な病気です。

改めて、『帯状疱疹』は、体内に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が、加齢、疲労、ストレス、糖尿病や癌など免疫低下を来す疾患などが原因となり、活発に活動(再活性と言います)することにより起こります。これは、多くの人が子供の時に感染する水ぼうそうの原因ウイルスで、日本人成人の90%以上が体内に潜伏していることが分かっています。特に50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が発症する、非常に頻度の高い疾患です。また、女性は男性に比べて発症リスクが1.5倍高く、夏場に多いといった報告もあります。

典型的な経過は以下の通りです。ここのポイントが「湿疹が出始める4~5日前、場合によっては2週間ぐらいたってから痛みが出てくる」ということです(そのため、『原因不明の痛み』として総合診療外来を受診される方も多いです)。最初は皮膚の違和感やピリピリ感などの神経痛が出現、その後、その神経の分布に一致して浮腫性の紅斑を認めます。これは、神経と皮膚両方で炎症が起こっているサインなので、この辺りまでくると激痛です😢 有名なブツブツした湿疹はこの後に現れ、2週間~一カ月程度かけて破れて、ただれて、乾燥して、最終的に皮膚が剥がれて治っていきます。

帯状疱疹予防.jp|50歳を過ぎたら帯状疱疹の予防接種ができます (taijouhoushin-yobou.jp)

厄介なのは合併症。『帯状疱疹後神経痛(PHN)』といって、神経が損傷されることにより、皮膚症状が治った後も「刺すような痛み」「焼けるような痛み」が残ります。発症した人の約2割が発症し、特に60歳以上で発症したり、最初の症状が重たい人に多くみられます。3カ月から長い人だと数年にわたって悩まされることもある、厄介な合併症です。また、帯状疱疹が頭から顔面にかけて症状が出る『ラムゼイ・ハント症候群』は、目や耳の神経が障害されてめまいや耳鳴り、視力低下を来すことがあり、重症化すると失明や顔面神経麻痺などの重い後遺症が残る危険があります。

とにかく、帯状疱疹は“高確率で発症”し、“発症すると痛みや後遺症で苦しむ”病気なんです。

もちろん治療法もありますが、一にも二にも予防です!予防にはワクチンを使いますが、これには『乾燥弱毒生水痘ワクチン』『シングリックス』の2種類があります。

・乾燥弱毒生水痘ワクチン

従来の水痘ワクチンを流用したものです。適応は50歳以上で、接種回数が一回で済みます。お値段も概ね8,000円前後(当院では7,800円)ですので、起こることの大変さを考えると、まずまずのお得感です。ただ、効果に関しては帯状疱疹の発生率が51.3%減少、PHNの発生率が66.5%減少するという、正直ちょっと微妙な感じです。重篤な副反応は稀ですが、生ワクチンですので、免疫力の低下した方(免疫抑制剤を飲んでる方や治りきっていない血液がんの方、3カ月以内に抗がん剤治療を受けた方、HIV患者さんなど)や、妊婦さんでは接種できません

・シングリックス

2020年1月に新たに発売された遺伝子組み換え型の不活化ワクチンで、とにかく強力な発症予防効果を持ちます。接種回数は2回で、2か月間隔で筋肉内に接種します。帯状疱疹に対する予防効果は、50歳以上の方で約97%、70歳以上の方で約90%と報告されており、水痘ワクチンよりも有効性が高いと考えられます。また、PHNの発症も1~2割程度まで低下させます免疫力の低下した方の接種も問題ありません。弱点は“副反応”“値段”です。主な副反応としては、注射部位の痛み78% 赤み38% 腫れ26%で、注射部位以外では、筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%、胃腸症状13%と報告されています。値段は乾燥弱毒生水痘ワクチンが8,000円前後なのに対して、22,000~25,000円(当院では22,000円)とかなりお高めです。要するに「効果は抜群だけど、痛いし怠いし、高いワクチン」です。

効果の差は明らかなのですが、コストや副反応を考えると、一概にどちらがいいとは言いにくいところです。ただ、一度接種を検討するする価値はあると思います。接種すべきかどうか悩まれている方が、是非一度ご相談下さい。