秋が深まってきましたね~・・・なんて言葉が、やっと言えるような気候になってきましたね。とは言え、昼間はまだまだ暑さを感じますし、体調維持が難しい毎日が続いています。実際、この時期は例年以上に体調不良を訴えられる方が多い印象です。もしかしたら、その原因は「秋バテ」かもしれません。
この「秋バテ」ですが、今年はなぜか取材だったり、執筆だったりをさせていただく機会が多くありました。特に、先日はFM AICHIの『DAYDREAM MAGIC』という番組のインタビューは、お勧めの一曲をかけさせてもらいました。いやぁ~、夢が一つ叶った(^^♪
WEB媒体の『オトナンサー』さんにも取材させていただきました。紙面の都合上一部カットされていますので、完成版(?)を添付させていただきます。
Q.そもそも、秋バテになる原因について、ご教示ください。主にどのような症状が出るのでしょうか。
ようやく暑い夏が終わって、「さあ食欲の秋だ!」「スポーツの秋だ!」と元気が出てくるはずの時期を迎えるはずなのに、「何となく体がだるい」「食欲がわかない」なんてことを経験したことがある方も多いのではないでしょうか?その症状の原因は「秋バテ」かもしれません。
秋バテの原因は以下の通りです。
夏バテの長期化
夏の疲れがなかなか抜けなくて、そのまま秋バテに突入してしまうパターンです。昔の夏バテは単純に暑さによるエネルギーの過剰な消費によるものでしたが、今の夏バテは冷房で身体を冷やしすぎたり、冷たい飲み物や食べ物をとりすぎて内臓を冷やしすぎたりすることによって「自律神経」が乱れ、全身の血液の巡りが悪くなることにより起こります。その不調が秋になってだるさや肩こり、食欲不振となって表れてきます。
急な冷え込み
暑い夏から涼しい秋になると、身体が気温の変化についていけなくなることがあります。また、同じ週の中でも真夏日があったり冬を思わせるような冷え込みがあったりと気温が安定しません。さらに、一日の中でも朝晩の寒暖差が大きいのもこの時期の特徴です。このような急激な気温の変化に対して、自律神経が一生懸命に体中の器官をコントロールしようと頑張ります。このコントロールが追い付かないのが、秋バテの原因の一つです。
急な天候変化
9月は8月に引き続いて台風の発生数が多く、近年は接近数・上陸数ともに増えてきています。また、一般的に9月に上陸する台風は勢力が強いことも特徴です。さらに、台風の数が減り始める9月の後半には秋雨前線が発生し、そこに上空からの寒気が流れ込むと前線の活動が活発になり、各地で大雨を降らせます。この不安定な気圧の影響が、耳の奥にあって体のバランスをとる働きをしている「内耳」に作用し、めまいや頭痛といったいわゆる「気象病」を起こしやすくなります。慢性的なめまいや頭痛は、結果的に自律神経のバランスも乱してしまいます。
日照時間の減少
「秋の日はつるべ落とし」と言うように、秋は他の季節に比べて急速に日が暮れる時間が早くなります。日照時間が短くなり、太陽の光に当たる時間が少なくなると、脳内の神経伝達物質の一つである「セロトニン」の分泌が減ってしまいます。セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、脳の興奮を鎮め、精神を安定させる作用をもっています。これが減ることにより不安感や意欲の低下をきたし、体調不調につながります。「秋は物悲しい季節」なんて言われるのはそのためなのです。
Q.夏バテと秋バテに違いはあるのでしょうか。秋バテに特有の症状がございましたら、ご教示ください。
夏バテの延長が秋バテにつながることもありますので、厳密な線引きは難しいです。実際、夏バテと秋バテが起こる原因は概ね同じで、寒暖差や気圧変化に伴う自律神経の乱れが主な原因になります。ただ、夏バテは暑さによるエネルギーの消費や、多量の発汗による水分不足やミネラル不足、食欲低下による栄養不足なども一因になります。秋バテにもそういった要素はありますが、より寒暖差や気圧変化による「自律神経の乱れ」と、日照時間の減少による「セロトニンの低下」に伴う症状が目立つようになります。
「自律神経の乱れ」は頭痛、めまい、ほてり、汗、口の渇き、喉のつまり、動悸、息苦しさ、お腹の張り、節々の痛みなど、とにかく多彩ですが、ポイントは「一つの臓器の症状では説明がつかない」ということです。これは、自律神経が多種の臓器を支配しているためです。ある意味「あれもこれも症状があって原因がよくわからない」といった症状が、自律神経が乱れた時の典型的な症状であり、秋バテの特徴と言えます。
セロトニンの主な役目は、ドパミンなど脳を興奮させるホルモンを抑制し、脳を鎮静化させる働きです。また、偏桃体という不安や恐怖に関わる器官の活動を調整することにより、恐怖・不安によるストレスをコントロールします。セロトニンが減るとイライラ感や落ち着かない感じが強くなったり、恐怖感や不安感が強くなったりします。日照時間の減少が原因の一つである秋バテは、夏バテに比べてメンタル不調を来しやすいです。
以上を踏まえて、秋バテのチェックリストを作ってみました。一つでも当てはまる方で、秋になって症状が増悪したという自覚のある方は、秋バテの可能性が高いと思います。
Q.秋バテを解消するには、どうしたらよいのでしょうか。食事面や生活面で改善すべき点について、ご教示ください。
最初に挙げた通り、秋バテの原因は「夏バテの延長」「自律神経の乱れ」「セロトニンの減少」ですので、それぞれに対する対策が必要になります。
夏バテの延長⇒じっくり身体を温める
先ほど述べたように、現代の夏バテは冷房で身体を冷やしすぎたり、冷たいものをとりすぎたりすることにより起こります。朝1杯の白湯を飲んだり、朝食に温かい野菜スープなどを飲むと、冷えて働きの落ちた胃腸に効果的です。38~39℃のぬるめの湯船にゆっくり浸かるのもいいですし、足湯を併用するのもいいでしょう。お酒も冷たいビールや焼酎は控えて、常温のワインや熱燗などへの切り替えを考えてみてください(ただし、飲みすぎは注意です!)。朝晩に冷え込むことも増えてきますので、季節にあったパジャマや布団を利用してください。疲労回復という点では、胃腸を整えて免疫力をアップしてくれる山芋やさつまいも、消化を助けて身体に潤いをもたらす人参やカブ、筋肉や臓器を強くするために必要なたんぱく質を多く含む乳製品や魚肉、エネルギー代謝を高めてくれるビタミンB群を多く含んだ豚肉のヒレやモモ肉、大豆製品、抵抗力を高めてくれるビタミンCを多く含んだ柑橘系の果物などを積極的に採るようにして下さい。
自律神経の乱れ⇒規則正しい生活
ここまで述べたように、気候の変化に伴う体調不良の根幹は「自律神経の乱れ」といって過言ではありません。自律神経を整えるコツは、一にも二にも「規則正しい生活をすること」です。一日の流れに沿って抑えてみてください。
【朝】
・起きたらまず日光浴で体内時計をリセット。時間がなければ15秒でもOKです。
・15分の早起きで時間に余裕をもって行動を。余裕がないと副交感神経の働きが低下します。
・少し熱めのシャワーを浴びて体温を上げると、交感神経が活性化しスタートモードに。
・朝食をしっかりとって、脳の自律神経を活性化。食べる前に白湯を飲むと効果アップ。
・慌ただしい朝こそ、鏡の前で笑顔。ゆっくり深呼吸して副交感神経を優位に。
【昼】
・お出かけの際は視線を上に。空や木々の緑でリラックス。胸張り姿勢になり質の良い呼吸に。
・連続した作業は90分まで。交感神経を定期的に休ませてあげましょう。
・笑顔でいるとストレスホルモンが減少!作り笑いでも効果あり。
・喫煙すると血管がしまり血圧上昇や脈拍上昇のリスクに。できれば禁煙を。
・夕方頃にストレッチや軽い運動をして、昼間の疲れをリセットしましょう。
【夜】
・夕食は寝る3時間前まで。ゆっくり休養モードに切り替える余裕を持ちましょう。
・日が落ちてからのカフェインは睡眠の質を悪くするのでほどほどに。
・就寝前のアルコールは、かえって睡眠の質を下げる。ダラダラ飲みもやめましょう。
・38~39℃のぬるめのお風呂で一日の疲れをとりましょう。
・パソコンやスマートフォンは控えめに。ゆったりした音楽やアロマの香りでリラックス。
セロトニンの減少⇒食べて、飲んで、リズミカルに動いて
セロトニンが増えると、幸福感が増します。また、緊張の原因になるノルアドレナリンの働きを抑えることにより、気持ちを安定させる効果もあります。さらに、セロトニンは睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の材料になりますので、セロトニンが増えると快眠を得られるようになります。セロトニンを増やすコツは以下の通りです。
<食べて増やす>
セロトニンの材料になるトリプトファン(赤身肉、大豆製品、乳製品、卵、カシューナッツなど)、セロトニンの産生を促進するビタミンB6(カツオ、バナナなど)やマグネシウム(ひじき、炒り胡麻など)を積極的に摂取しましょう。よく噛んで食べるとより効果的です。
<飲んで増やす>
お勧めの飲み物は牛乳とトマトジュースです。牛乳にはトリプトファンが多く含まれており、セロトニンを増やす効果があります。トマトジュースに含まれるGABA(γ-アミノ酸)は緊張やストレスを緩和する効果があり、セロトニンの働きを助ける効果が期待できます。
<太陽の光で増やす>
セロトニンは朝日を浴びることで分泌が促進されます。起きたらすぐにカーテンを開けて、朝日を浴びる習慣をつけましょう。朝の時間帯にベランダに洗濯物を干したり、ウォーキングをしたり、自転車で通勤したりすると、さらにセロトニンの分泌が増えます。
<リズム運動で増やす>
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、ダンスなどのリズミカルな運動は、セロトニンの分泌を促します。20分程度の、少し息が切れる程度の運動がお勧めです。ただし、苦しいほど負荷をかけたり、長時間運動を続けると、ストレスホルモンであるコルチゾールを増やしてしまうので気を付けましょう。
Q.秋バテを放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性がありますか。受診の目安も含めて、ご教示ください。
ここまで述べてきた通り、秋バテの原因は「夏バテの延長」「自律神経の乱れ」「セロトニンの低下」です。特に年配の方々は今年の猛暑に伴い食欲低下、めまい、だるさの持続、睡眠の質の低下を認めることが多くなっています。そのまま漠然とした不調をかかえて秋を迎えた結果、免疫力が低下して、感染症やがんに罹るリスクが高くなります。また、自律神経の乱れ、特に交感神経が刺激され続けると、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)と呼ばれる免疫細胞の働きが低下し、やはり感染症やがんに罹りやすくなります。「いつもの風邪に比べて治りが悪い」「微熱などの漠然とした症状が2週間以上続いている」「夏の体重減少が回復しない」といった症状を認める場合は、医療機関への受診をお勧めします。
一時的にセロトニンが低下することにより憂鬱な気分になることは、誰しも経験があると思います。適度な運動や趣味、友達との会話などでリフレッシュするよう心掛けて下さい。ストレスを発散しても憂鬱感や不安感が2週間以上続く場合は、うつ病や不安障害の可能性があります。これは、単に気持ちの問題ではなく、脳のエネルギーであるセロトニンが減少することによっておこる病気です。「気合が足りないからだ」「もっと頑張らなきゃダメだ」などと自己判断せず、一度医療機関を受診してみて下さい。
その他、持続する症状の中には、色々な病気が隠れている場合があります。「たかが秋バテ」などと侮ってはいけません。自己判断せず、不調や不安を感じた時は、是非お医者さんに相談してみて下さい。
ま、そうは言ってもやっぱりこの時期は過ごしやすい季節です。猛暑で運動不足になったり食欲が落ちてしまったりした方も、改めて健康管理を始めてみましょう。もし、秋バテ気味でしたら、私がラジオで紹介させていただいた「ビッゲスト・パート・オブ・ミー」なんてどうでしょう。アメリカのプログレッシブ・ロックバンド、アンブロージアが1980年に発表した心地よいメロディーに美しいハーモニーが重なった曲で、秋バテの方にもおすすめの曲です。是非お聴きください。